高周波回路向け低損失材料の適切な選定
2026年1月22日
Dr Shababa Selim
通信システムの高周波化(5G/6Gなど)やデータ転送速度の高速化が進むにつれ、伝送損失を最小限に抑え、シグナル・インテグリティを維持することが非常に重要となります。その要求に応えるのが低損失材料です。この材料は、ミリ波帯5G通信や将来の6G通信、車載用レーダーシステムの他、サーバースイッチ、トランシーバーといったデータセンターインフラなど、さまざまな用途で不可欠です。
IDTechExの調査レポート「低損失材料(5G/6G, レーダー, 高速デジタル向け)2026-2036年:市場、トレンド、予測」では、低損失材料需要は今後10年間で7倍に成長すると予測しています。市場には低損失材料の選択肢が複数あるため、本記事では高周波用途向け材料の選定を導く主要特性と考慮すべき要因について解説します。

低損失材料例。出典:IDTechEx「低損失材料(5G/6G, レーダー, 高速デジタル向け)2026-2036年:市場、トレンド、予測」
低損失材料の種類
市場には有機系・無機系に大別されるさまざまな低損失材料がありますが、材料ごとに、性能、製造性、コストの間でそれぞれのトレードオフがあります。高周波用途では有機材料の採用が進んでおり、代表的な材料としては、特殊エポキシ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などが挙げられます。
一方、LTCC(低温同時焼成セラミックス)やガラスなどの無機材料は、進歩が比較的緩やかであるものの、吸湿性が低く、誘電特性も安定していることから、高い注目を集めています。
IDTechExは、セラニーズ、京セラ、アイソラをはじめとする主要材料メーカーへのインタビューを基に、最新調査レポート「低損失材料(5G/6G, レーダー, 高速デジタル向け)2026-2036年:市場、トレンド、予測」で主な進展やトレンドを徹底分析しています。
有機・無機系低損失材料の誘電特性(DkとDf)。出典:「低損失材料(5G/6G, レーダー, 高速デジタル向け)2026-2036年:市場、トレンド、予測」材料特性:性能の指標
低損失材料は、通信(5G/6G)用やレーダーシステム用のミリ波などの無線周波数(RF)で最適な性能を発揮するため、誘電正接(Df)と誘電率(Dk)が低く、安定するよう設計されています。これらの誘電特性は、データセンターインフラ(トランシーバー、スイッチなど)に用いられるような高速回路の実現の鍵にもなっています。例えば、Dkが変動するとインピーダンスが不安定になり、信号のひずみが生じる可能性があるため、動作周波数帯にわたってDkが安定している誘電材料を選ぶことが重要です。
一般的に有機材料は、その組成(樹脂の種類、配合、含有量、フィラー、添加剤など)に応じてDk値とDf値に大きな幅があります。一方で、無機材料(LTCCなど)は、一般的にDk値は高いものの、Df値は低く、より広い周波数帯にわたって安定しています。また、有機材料と無機材料を複合化することで、機械的強度や特性を向上させた材料もあります(例:セラミックやガラスなどと複合化したPTFE材料)。
材料選定には、性能と製造性を確保するための機械特性や熱特性だけでなく、さまざまな用途で全体的な競争力を維持するためのコストを考慮することも不可欠です。
特に重要な特性の1つが、熱膨張係数(CTE)です。基板材料間でCTEが一致しない場合、熱サイクルで層間剥離、亀裂、反りが発生し、信頼性の低下につながる可能性があります。プリント基板(PCB)で使用される銅張積層板の場合、材料のCTEが銅のCTEと厳密に一致するようにすることが不可欠です。
このほかにも、熱伝導率や吸湿性が重要な指標として挙げられます。熱伝導率が高いと、誘電特性が安定するだけでなく、効率的に放熱(高出力用途には不可欠)することができます。一方で、吸湿が高いと、シグナル・インテグリティの低下や挿入損失の増大を招く可能性があります。表皮効果による導体損失を低減するには、銅箔の粗さを最小限に抑えることも欠かせません。
IDTechExの調査レポートでは、高速用途や高周波用途に不可欠なこれらの材料特性を深く掘り下げています。PCB・RFコンポーネント向けに市販されている低損失有機材料、低損失無機材料、低損失複合材料150種類以上を対象に、Dk、Df、吸湿性、CTE、熱伝導率などの各特性にわたるベンチマーク評価と分析を掲載しています。また、将来の6G用途向けの材料動向についても取り上げています。
2036年への道筋:低損失材料
77~79GHzの車載用レーダーが安全性の基準となることや、5Gの本格展開が継続する中で、将来的には6Gによるサブテラヘルツ帯への進展が想定されます。今後10年の課題は、単に誘電損失を最小化することではなく、加工性と安定性を備えた材料によって、量産可能な形かつ現実的なコストで実現することです。
「低損失材料(5G/6G, レーダー, 高速デジタル向け)2026-2036年:市場、トレンド、予測」 では、低損失材料需要を牽引する主な技術や応用分野を考察しながら、市場動向を客観的かつ包括的に分析しています。一次調査に基づき、業界動向に関する洞察を提供し、有力企業分析や重要な材料性能特性の製品別ベンチマーク評価もご覧いただけます。また、用途別と材料種類別の10年間需要予測も掲載しています。
さらに詳しくはIDTechExのレポート「低損失材料(5G/6G, レーダー, 高速デジタル向け)2026-2036年:市場、トレンド、予測」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。IDTechExの最新調査レポートは、こちら でご覧いただけます。
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