車載レーダー市場で大きな可能性を秘める短距離レーダー
2023年10月16日
レーダーは、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)やブラインドスポットディテクション(BSD:後方死角検知機能)などの一般的なADASの機能に使用されるため、自動車市場にすでに定着しています。
IDTechExの最新調査レポート『車載用レーダー 2024-2044年: 予測、技術、用途』では、自動車にほぼユビキタスな存在であるにもかかわらず、このセンサーにはまだ大きな成長の可能性があり、その大部分は短距離レーダーの新たな機会によって牽引されていることを明らかにしています。

Source: IDTechEx
IDTechExの調査では、2022年には新車の約70%がACCまたは自動緊急ブレーキ(AEB)を搭載して出荷されるといます。ACCやAEBでは、一般的に長距離・高性能の前方レーダーが使用されています。すでに市場の70%が前方レーダーを使用しているため、さらなる成長の余地はほとんどありませんが、BSDのような用途を対象とする短距離レーダーは、現状では普及率がはるかに低くなっています。2022年に出荷された新車のうち、BSDシステムを搭載していたのはわずか30%程度でした。BSDのような先進運転支援システム(ADAS)が人気を呼んでいることもあり、短距離レーダー市場は今後数年間で規模を3倍以上に拡大する可能性があります。
短距離レーダー市場は、BSDのような既存のADAS技術の採用拡大によって成長するだけでなく、1台当たりにさらに多くのレーダーを必要とする新技術も登場しつつあります。車線変更支援、交差点歩行者自動緊急ブレーキなどのシステムは、ADAS技術の最先端を行くものであり、それらには、最低4個の短距離レーダーで360度を完全にカバーするレーダー探知範囲が必要になる場合があります。これはレーダーコクーンと呼ばれ、車両の周囲に包括的な監視・保護領域を作り出します。このような技術の登場により、1台当たりに必要な個数が大きく増加し、レーダーに大きな成長の機会が新たに生まれます。
IDTechExは、レベル3自動運転の認可を目指している車両の中で、レーダーコクーニングを目にしてきました。レベル3は、ドライバーが運転という作業から解放されることを意味しており、車両が周囲の状況を注意深く認識し続けるための包括的なセンサー群を必要とします。これまでのところ、ホンダのレジェンド、メルセデスのSクラスとEQSが一部の地域でレベル3運転の認可を受けていますが、これらはどれも4個のコーナーレーダーを使用し、レーダーコクーンを構成しています。IDTechExでは、BMWが現在取り組む7シリーズとi7のレベル3認定によって、レベル3技術が今後10年ほどで主流となり、短距離レーダー市場にさらなる成長をもたらすことになるのではないかと考えています。

Number of sensors for different autonomous levels. Source: IDTechEx
前方レーダー1個、側方レーダー4個で、1台当たり合計5個のレーダーが搭載されているというと多いように感じるかもしれませんが、試験中の一部のロボタクシーと比較すると少数です。ロボタクシーは自律型MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)向けに設計されており、運転席に人がいない状態で、それもおそらく運転免許保有者が車内にいない状態で人々を輸送することになります。そのため、さまざまな気象条件や照明条件に対応でき、センサーが1箇所または複数箇所故障した状態でも機能し続ける非常に堅牢なセンサー群を必要とします。IDTechExの調査によると、これらの車両は1台当たり平均して10個以上のレーダーを搭載しています。こうした車両がレーダー市場を独占することにはならないものの、車載レーダー市場が今後20年間にわたって継続的な成長を期待できることを示す一例となっています。
IDTechExの最新調査レポート『車載用レーダー 2024-2044年: 予測、技術、用途』では、短距離レーダーが最も成長する可能性があることを明らかにしつつも、前面レーダーに対する需要の変化も明らかにしています。自律走行技術の実現に伴い、前方レーダーに対する性能要求は高まり続けており、より広いレンジとより優れた画像ポテンシャルが将来の技術に対する重要な要件となっています。
レーダーは自動車産業においてすでに定着しており、2022年の市場規模は80億米ドルでした。しかし、IDTechExでは、ここで取り上げたあらゆる成長機会により、この市場の継続的かつ健全な成長を予測しており、10年間のCAGRは6.9%であるとみています。この市場がどのように成長するか、今後の技術変化や市場予測など、詳細については、調査レポート『車載用レーダー 2024-2044年: 予測、技術、用途』で、ご確認ください。
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