スマートパッケージングで「真実の瞬間」を取り戻す
2019年4月10日
Raghu Das

IDTechEx 新しい調査レポート 『スマートパッケージング 2019年―2029年』で、IDTechExは電子スマートパッケージングが2029年には18億ドルの市場になると見ています。
小売ビジネスは重要な過渡期を迎えています。消費者人口が増加しているうえ、高齢者の割合も上昇しています。こうした高齢者は簡単に開封できるパッケージを求めています。その一方で店内での異物混入を防ぐために簡単には開封しにくいデザインのパッケージが増えており、消費者にとっては扱いにくいものになっています。都市では人口集中が進み不動産価格が上昇しています。そうした中、レジが店内の貴重なスペースを無駄に占領してしまっています。サプライチェーン内でも自宅でも無駄は山ほどあります。サステナビリティに関する議論は活発ですが実践は始まったばかりです。既に食料品以外のオンラインショッピングは広く定着しています。運送分野も変化しつつあり顧客への商品の配達時間を短縮するために、最終目的地までの電気自動車での自動走行が試行段階にあり、実現の期待が急速に高まっています。食料品のオンラインショッピングも広まりつつあります。
上記のすべての要素が各企業に課題を突きつけています。小売業では消費者が購入に関する意思決定を下す重要な時点、いわゆる「真実の瞬間」として次の2つがよく知られています。1つ目の瞬間は消費者が商品パッケージを見た直後であり、そのパッケージに基づいて商品に対する消費者の意見が形成されます。2つ目の瞬間は商品が消費または使用された時点です。ところがオンラインショッピングによって1つ目の真実の瞬間のインパクトは薄れつつあります。商品のマーケティングに多額を投じてこなかったライバル企業にとって市場の参入ハードルは低くなっています。今や市場ルールは目まぐるしく変化しています。
IDTechExの調査レポート 『スマートパッケージング 2019年―2029年』では、こうしたトレンドから生まれた商機を取り上げ、特に企業の成長と消費者への付加価値の提供という観点からパッケージ関連の技術をどのように開発し利用していくべきかを考察しています。
例えばパッケージ分野ではRFIDが注目を集めています。日本の経済産業省は国内の小売大手企業と共同で2025年までに小売商品に1000億枚の電子タグを付けることを目指すと発表しました。ただし、タグ価格が適切であることが条件となります。日本の労働市場での若年層不足がこの取り組みの一因とされ、日本政府や小売企業はこうした若い働き手をスーパーマーケットのレジで商品をスキャンするなどの非生産的な仕事に就かせたくないと考えています。既に複数の小売企業が日本や中国でRFIDを使用する電子タグ商品での自動精算を実験中です。このほかRF位置特定技術とマシンビジョンを組み合わせたセンサーフュージョンでも同様の成果が得られます。センサーフュージョンを実用に導いたのが元々はスマートフォン用に開発された低価格カメラです。Amazonはレジのないこのタイプの店舗を米国内でいくつか出店しています。
決済状況も変化しています。中国ではQRコードが急速に普及したことで小規模小売店はクレジットカード処理端末機を導入する必要がなくなっています。またWeChatやAliPayなどのアプリによってQRコードが読み込まれた直後に小売店は代金を受領でき、信用決済の利便性を享受しています。こうした成功には現地化は必要であり、他の場所で人気のソーシャルメディアアプリであっても決済ビジネスの参入には成功していません。
店舗内の商品に電子タグを付けることで在庫管理が向上するため、売上増につながっています。IDTechExの調査ではNFC対応電話を使って消費者が商品と情報を共有できる2周波対応RFIDタグの利用も増加しています。
市販化されている新テクノロジーの1つにフレキシブルICがあります。これによりNFCラベルのコストはさらに低下し、電子タグの適用範囲が広がっています。
このほかにもパッケージ分野では消費者に刺激を与え、商品の差別化につながる大きな進展が見られます。光ったり、音が鳴ったりするスマートパッケージをカスタマイズして、人の命を守るのに役立てられます。例えば、IT技術を利用したブリスターパックを用いて服薬コンプライアンスが良好であることを記録したり、配送中のワクチンが限度を超えた温度にさらされた場合に使用に適さなくなったことを警告するサーモトレースTTIラベルを用いたりすることができます。
IDTechExの調査レポートでは実現可能な技術やケーススタディ、サプライヤーについての情報を網羅しています。詳しく『スマートパッケージング 2019年―2029年』をご覧ください。
Top image: Fraunhofer IPMS
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