テスラのオートパイロットは、果たしてAV(自動運転車)なのか?

テスラのオートパイロットは、果たしてAV(自動運転車)なのか?

Close up of a Tesla steering wheel and a hand controlling the dashboard
8月に交通安全を管轄する米国の連邦機関が、テスラ社とその自動運転車の主張に対する調査を発表し、自動運転車導入の課題がクローズアップされています。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、11件の衝突事故について特に着目しています。いずれの事故でも、衝突前にはオートパイロットモードで走行しており、ドライバーが運転に集中していない時間があったということです。テスラの車は「フル・セルフ・ドライビング」(FSD)を誇りますが、現在の規制では完全な自動運転車を路上で走らせることはできませんが、何が起こっているのでしょうか?
 
自動運転車(AV)という言葉から思い浮かべるのは、ドライバーが運転操作に介入せずに車が自律して走行する光景です。しかし、今日の自動車業界では、これはまだ実現していません。米国自動車技術者協会(SAE)では自動化のレベルを6段階で定めており、参入への障壁は驚くほど低くなっています。
レベル1の車両に必要な機能は、クルーズコントロール機能による設定速度の維持など、運転の一部のみの自動化です。レベル2では運転に必要な2つの要素に対する支援機能が必要となります。一般的には車間距離制御装置(ACC)と車線維持支援システムを備えることでこの条件が満たされます。
 
レベル4でようやくSF映画に登場するような自動運転車が実現します。さて、テスラ車はどのレベルに相当するのでしょうか? レベル3か、それともレベル4でしょうか。実は、テスラのオートパイロットシステムはレベル2に相当するのです。つまり、自動運転車ではないため、ドライバーが常に道路に注意を払う必要があります。
 
自動運転車に関する規制については、IDTechExの最新レポート『自動運転車、ロボタクシーおよびセンサー 2022-2042年』での詳細な分析を提供しています。
 
SAEが規定する自動運転の6つのレベル. Source: SAE, IDTechEx
 
テスラのオートパイロットが悪いシステムだと言っているわけではありません。実際、コンシューマー・レポートでは、市場で2番目に優れた先進運転支援システム(ADAS)とされています(ちなみに首位はGMのスーパークルーズです)。このことは、係争中のテスラのドライブレコーダーの映像からも見て取れます。交通状況に見事に対応し、衛星ナビゲーションにも追従しています。しかし、車両を運転しているのはシステムではなく、あくまで人です。ドライバーが眠ったり、運転席を離れたりしている映像がありますが、こうしたことはシステムの誤用であり、法律違反にあたります。
 
ADASは、現在市販されている自動運転車をより適切に表現した言葉です。現在販売されている車両に搭載されているのは、運転支援機能に過ぎず、ドライバーが常に制御を行います。高性能なADASと高度な自動運転車の違いについては、IDTechExの最新レポート『自動運転車、ロボタクシーおよびセンサー 2022-2042年』で、ご確認ください。
 
テスラにとっての問題は、同社のシステムが大惨事をもたらすほどに売れ過ぎていることです。その問題は、「完全自動運転」という表記から、このシステムを説明するときのCEOイーロン・マスク氏の大げさな言い方にまで及びます。マスク氏はテスラ車の「完全自動運転」へのアップグレードについて2018年から語っており、当時から数々のリビジョンアップ、アップグレード、ハイプサイクルが繰り返されてきました。顧客の中にはそれらを混同し、実際は自動運転車ではないにもかかわらず、自分は自動運転車を購入したのだと思い込んでしまう人も出てくるでしょう。

カメラのみのシステム:テスラは間違っているのか?

他の問題として、カメラだけから構成されるテスラのセンサースイートが挙げられます。他社はカメラ、レーダー、LiDAR(ライダー)に重点を置いているのに対し、テスラはカメラのみのアプローチを追求しており、モデル3とモデルYの車両からはついにレーダーを外しています(2021年5月時点)。その理由として挙げているのが、人が運転時に目から得る情報は、カメラスイート(カメラ一式)が捉えられる情報と同じであるため、車はカメラだけで走行できるようになるということです。また、カメラスイートは人間のドライバーよりも優れた可能性をも秘めています。なぜなら、カメラは車の周囲をより広く見渡すことができ、夜間には赤外線カメラの方が優れた働きをするためです。
 
問題は、カメラはレーダーと同じ働きができないことです。カメラはAIを通して距離や速度を推測できますが、レーダーはこれらの情報を単体で測定でき、カメラの課題である悪天候、暗闇、直射日光などの影響をほとんど受けません。
 
Source: IDTechEx
 
テスラがカメラだけで構成されるカメラスイートを利用して人間の運転能力を超えることができるのは確かですが、IDTechExでは、テスラがレーダーを無視することで自社の可能性を制限し、自らを競争上の不利な立場に置いていると考えています。他のメーカーも、LiDARを自社のADASセンサースイートに導入しようとしています。これにはレーダーと比べていくつかの利点がありますが、欠点もあります。
 
レーダーとLiDARは、カメラシステムのパフォーマンスがその潜在能力のピークを大きく下回る夜間において非常に重要になる可能性があります。ほとんどの歩行者の死亡事故は夜間に発生するという事実は、ADASシステムにとって極めて重要です。NHTSAはまた、調査しているテスラのオートパイロットシステム関連の事故のほとんどが、暗い状況で発生したものであることも指摘しています。
 
Continental、Arbe、Metawaveなどの各社から新型のより高性能なレーダーが次々に登場していることもあり、テスラにとってはレーダーの廃止を考え直す時期がきているのかもしれません。これらの次世代レーダーにより、テスラはこれまでレーダーに関して抱えていた課題に対処できる可能性があります。次世代レーダーは、テスラ車に優れた夜間性能を提供するだけでなく、日中においてもテスラのカメラシステムをサポートすることができるからです。これによりテスラは、日本などで、規制が変更されレベル3の活動が許可された場合に対応できるようになります。
 
テスラのオートパイロットとFSDは悪いシステムというわけではありません。これらは、市販されている最高レベルのADASシステムです。米国政府とNHTSAの調査の結果、これらのシステムに何か厄介な問題や危険性が見つかることはまずありません。問題があるのは、システムの機能についての危険な誤解だけです。テスラの車両は完全自動運転車ではなく、ドライバーはこれらの車両を運転することに対して非常に大きな責任を負うという明確なメッセージが出されない限り、調査対象になっているこのような事故によって、自動運転車に対する認識が傷つき、最悪の場合、人命が失われ続けることになるかもしれません。
さらに詳しくは、調査レポート『自動運転車、ロボタクシーおよびセンサー 2022-2042年』で、ご確認ください。
 
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