燃料電池自動車:効率とスケーラビリティ

John Li
Fuel cell electric vehicles (FCEVs) are a zero-emission solution, where hydrogen fuel is combined with air in a fuel cell stack to produce electrical power. The only on-road emission is water vapor
2024年の販売台数が引き続き数千台だった燃料電池自動車(FCEV)に対して、バッテリー電気自動車(BEV)の販売台数は1,000万台を超えました。一般的に、バッテリー式電動パワートレインは内燃機関(ICE)車やFCEVと比較して、効率の点ではるかに優れていると言われています。IDTechExの分析では、BEVの場合、供給エネルギーの車輪への伝達効率はFCEVの3倍に上ることがわかっています。この点は確かに重要ですが、それだけですべてが決まるわけではありません。IDTechExの調査レポート「燃料電池自動車 2025-2045年:市場、技術、予測」では、燃料電池自動車の利点と欠点の両方を分析し、各車両セグメントにおける市場需要や燃料電池とバッテリーの需要に焦点を当て、詳細な予測を提供しています。
 
燃料電池自動車(FCEV)は燃料電池スタック内で水素燃料と空気を混合して電力を作り出すゼロエミッションのソリューション。路上走行時に排出されるのは水蒸気のみ。出典:IDTechEx
 
急速に向上している充電能力
 
2025年3月、BYDは乗用車向けメガワット(MW)級充電器を発表したことで大きな注目を浴びました。さらに同社は、この充電器を年内に4000台設置する計画であることも明かしています。5分ほどでEVへのフル充電が完了することから、燃料補給という点においてFCEVがBEVよりも優位であることへの疑念が湧いてきます。そのうえ、中国と韓国を除く全主要地域で水素ステーションの数が頭打ちになってきているのに対し、DC急速充電器を利用できる場所は主要乗用車市場で増加し続けています。
 
高出力充電の課題
 
とはいえ、DC急速充電器を利用できるようにするにはコストがかかります。繰り返される高出力充電のピーク需要に対応できる充電ステーションを建設する必要が生じてくるからです。また、BYDが提案しているメガワット充電やトラック用MCS(メガワット充電システム)の充電規格で使用されているような高出力レベルの充電に対応できるグリッド接続やインフラが多くの地域ではまだ整備されていません。つまり、ナショナル・グリッドの試算に基づくと、小さな町の電力消費量が20MWだとして、複数の充電スタンドが設置されているドライブインの場合、小さな町と同等のピーク電力が必要になるということです。電力網を更新するとなると、更新規模や計画・建設の期間によるものの、少なくとも数十万ドルの費用と数か月から数年の時間がかかります。そこで、この高い電力需要に対応するため、ピーク時の電力需要を抑えられる定置型エネルギー貯蔵ソリューションの開発が進められています。
 
水素ステーションのスケーラビリティ
 
水素ステーションの場合は水素をステーション内で貯蔵します。つまり、一定の電力が必要にはなるもののステーション内でグリーン水素を製造し、電気燃料よりも容易な方法で貯蔵できる水素燃料をステーション内に貯蔵しておけるということです。そうすることで、DC急速充電スタンドを利用した場合よりも、ピーク電力需要を大幅に抑えることが可能になります。チューブトレーラー方式の水素ステーションの場合、ステーションで利用可能なエネルギーの上限はチューブトレーラーの最大輸送量によって決まります。将来的には水素パイプラインが敷設され、水素の安定供給を可能にするインフラ網が整備されることでしょう。ただし、一般的に水素ステーションは計画段階から完成まで数年かかる上、MW充電ステーション同様、水素ステーションでも水素の製造、輸送、圧縮、貯蔵用の設備がそれぞれ必要になり、多額の設備投資が必要となります。
 
結論
 
グリーン水素の将来の利用可能性に関する問題は、依然として懸念が残ります。コスト効率の高い低炭素水素を大量に利用できるようにならなければ、FCEVの普及が大幅に進むとは考えにくく、今後もグレー水素が主流であり続けるのであれば、持続可能性全体から見た利点についての疑問も残るでしょう。現時点では、FCEVは維持費が高額で、実用化されている台数も多くはないことから、水素ステーションは利益を生み出すのに苦戦を強いられています。将来的に、水素需要のある業界(石油精製業、製鋼業)の後押しを受けて、水素燃料の入手性が高まり、FCEVにとってコスト効率の高い燃料となり得る可能性もあります。
 
FCEV、現在の市場状況、進展、今後の動向に関する詳細は、IDTechExの調査レポート「燃料電池自動車 2025-2045年:市場、技術、予測」でご覧いただけます。本調査レポートでは、ゼロエミッション車市場の全体像を把握するために、重要な要素を評価し、BEVと比較したベンチマーク評価を掲載しています。

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