EV充電市場を牽引する3つの主要トレンド

EV充電市場を牽引する3つの主要トレンド

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世界は自動車産業における電化革命を目の当たりにしています。電気自動車(EV)は、気候変動と闘い、二酸化炭素排出量を削減するための説得力のあるソリューションとして登場しました。より多くの個人や企業が電動モビリティに移行するにつれ、効率的で利用しやすいEV充電インフラへの需要が急増しています。この急速に進化する状況において、EVエコシステム全体の関係者にとって、先手を打つことは不可欠です。IDTechExの調査レポート『電気自動車と電気車両の充電インフラ 2024-2034年』は、この問題の核心に迫り、EV充電市場を形成する3つの主要トレンドを明らかにしています。
 
800Vバッテリーとトラクションシステム一体型車載充電器(iOBC)
 
多くEVは400Vバッテリーアーキテクチャに依存してきましたが、将来的には800V以上となります。電圧が2倍になるということは、EVの充電時間が大幅に短縮されるということです。次世代の車両プラットフォームにおける比較的単純な技術革新は、EVのトラクションシステムの高出力な電気系統を利用し、停車中に高出力の車載用DC充電器を兼ねることです。充電回路の一部としてトラクションシステムのパワーエレクトロニクスを使用することで、各車両の定格は自動的にバッテリーの最大Cレートとなり、高速充電が可能になります。
 
より高いプラットフォーム電圧で動作する一部の商用車(BYD、ABB/日立)は、すでに車載トラクションインバータを充電回路の一部として使用する実証に成功しています。EV乗用車業界では、800Vプラットフォームとトラクションシステム一体型車載充電器への大規模な移行がすでに始まっており、多くのモデル(ヒョンデ、ルシード)がすでに販売または発表されています。IDTechExは、2026年には多くの大衆車メーカーが第3世代のプラットフォームに移行すると推測しています。駆動装置と充電ステーションは類似または同一の部品で構成されているため、充電ステーション内にある設備のほとんどが不要になり、コスト、重量、公共スペースの削減が可能です。
 
次世代の充電インフラでは、現在のEV充電器で見られる不要部品の重複を排除し、オンサイト発電・蓄電など、DCを中心に最適化された新しいインフラを構築できるようになります。次世代のEV充電インフラは、双方向DCマイクログリッドの分散型ネットワークの様相が強くなるでしょう。IDTechExの調査レポート『電気自動車と電気車両の充電インフラ 2024-2034年』では、EVSEメーカーの20~30kWDCウォールボックスの投入について、出力、電圧、電流、重量という評価基準を用いてベンチマーク評価を行っています。
 
オフグリッドソーラー充電インフラ
 
EV用のオフグリッドソーラー充電インフラは、基礎のための掘削や溝堀りなしに設置できるため、ブラウンフィールド、核廃棄物処理場、空港など、掘削が許されない特定の環境にとって理想的なソリューションとなっています。グリッド上の予備容量が不足することやインフラがグリッド接続されるのを待つことは、標準的なEV充電器を設置する際に深刻なボトルネックとなる可能性があるため、オフグリッドのソリューションへの需要が生まれています。IDTechExの調べでは、オフグリッドソーラー充電を手掛ける企業が太陽追尾式ソーラーキャノピーをオンサイト蓄電池につなぎ、ポータブルソリューションを提供しています。
 
市販されているEV用ソーラー充電インフラの例. Source: Compiled by IDTechEx from manufacturers' data
 
米国の国家電気自動車インフラ(NEVI)フォーミュラプログラム
 
2023年2月15日、米国連邦道路庁(FHWA)とバイデン政権は、NEVIプログラムの助成金で購入・設置される充電器の基準を発表しました。この中には、充電の予測可能性(プラグの種類、出力レベルの統一)、信頼性の要件(最低稼働時間:97%)、アクセシビリティ、プラグアンドチャージ機能などがあります。加えて充電器は、部品のほとんどを国内製造にして、徐々に規制が強化されるというバイ・アメリカン政策の基準も満たさなければなりません。
 
NEVIによって米国でのEV充電インフラの整備は加速していますが、市場は急速な成長曲線の入り口にあるにすぎません。NEVIプログラムを開始したばかりの州がほとんどで、多くの州では充電器設置の準備は2023年後半まで整わないでしょう。IDTechExでは、NEVIの充電器の設置は2024年に一斉に始まると予測しています。また、米国の公共充電市場の拡大に伴い、多数のEVSEメーカーが、バイ・アメリカンの基準に準拠し、市場投入までの時間を短縮するべく、米国内に製造施設を建設していることが分かりました。
 
US building up domestic manufacturing base for EV chargers. Source: Compiled by IDTechEx from press release data
 
米国では、DC急速充電器(24~350kW)の設置が、レベル1および2のAC充電器設備を上回るペースで増加しています。2022年全体では、出力が250~349kWのEVSEポートの数が最も高い割合で増加しています。この増加は、250kWの出力を備えるテスラの新型スーパーチャージャーの施設が加わったことに起因します。出力レベルの高い急速充電インフラ(349kW超)の増加は、主にエレクトリファイ・アメリカ、EVゴー、リビアン・アドベンチャー・ネットワークの新規設置によるものです。米国の公共の充電器施設においては今なおAC充電器が主流ですが、州間旅行者のニーズに応えるため、DC充電器のシェアが徐々に上昇すると予測されています。
 
DC fast chargers will grow to take 33% of the public charger market share in the US by 2034. Source: IDTechEx - "Charging Infrastructure for Electric Vehicles and Fleets 2024-2034"
 
結論として、EV充電市場におけるこれらのトレンドは、電動モビリティの変革的な未来への道を開きつつあります。速度・効率が向上した充電ソリューションの出現により、世界規模でのEV普及に向けて新たな可能性が開かれています。高電圧アーキテクチャへの移行は、急速充電器の設置を支援する規制上の取り組みとともに、パフォーマンスの向上と充電時間の短縮を約束するものです。EV充電市場に関する IDTechExの調査レポート『電気自動車と電気車両の充電インフラ 2024-2034年』には、技術別(ACとDCで区分)、出力クラス別、主要地域別に10年間の詳細な予測を掲載しています。
 
EV充電インフラへの理解をさらに深めるために、IDTechExの調査レポート『電気自動車と電気車両の充電インフラ 2024-2034年』を、ご活用下さい。
 
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