透明導電性フィルム(TCF)&マテリアル : 過去、現在そして未来

Dr Khasha Ghaffarzadeh
透明導電性フィルムおよびマテリアルの市場は急速に変化しています。この継続的な変革は技術、アプリケーション、サプライヤーなどあらゆるところで起こっています。この記事ではこの業界の過去、現在、この先を簡単に概観し、さまざまなアプリケーション、テクノロジー、およびマテリアルの過去、現在、および将来の状況を追跡し予測します。
 
この記事はIDTechEx調査レポート "透明導電性フィルム(TCF)2018年-2028年 フォーキャスト、市場、テクノロジー" (Transparent Conductive Films (TCF) 2018-2028: Forecasts, Markets, Technologies)から抜粋しています。 本レポートは、10技術・20用途別市場の詳細な数値とSQM(サービス品質管理)による市場予測を掲載しています。また約90社に関して1次情報に基づく知見も提供します。詳細なデータを駆使した技術アセスメントとロードマップ等を紹介していきます。
 
過去:主要技術のシフトとこれまでの市場の変化
 
家電市場の技術サイクルが短命であることは珍しくありません。タッチディスプレイもその例外ではありません。実際、私たちはこの市場の分析を開始した2008年以来多くの変化を目の当たりにしています。
当社は長年にわたって透明導電性フィルム(TCF)市場と関わってきた中で投影型静電容量(PCAP)技術の普及によって、抵抗膜方式のタッチパネルが基本的に時代遅れになりつつあることを目の当たりにしてきました。さらに最近では、(アドオン型に対して)組込型のタッチテクノロジーが普及するにつれて、主力はパネルからディスプレイメーカーに移行していることがフィルム供給のアドレッサブル市場に悪影響を及ぼしています。この技術シフトは当社レポートで紹介している市場予測でも明確に示されています。
 
これらの技術の変化と並行して、タッチディスプレイ技術の市場構成も変化しています。 携帯電話については低価格に挑む企業が新興市場に登場する中、販売台数の急増期は終了しました。タブレットは当初の売上増のトレンドが逆転し、長期的な低迷期に突入しています。ノートパソコンの売上は安定しているもののタッチテクノロジーの浸透率は期待外れとなり、オールインワン製品は総じて業界の当初の期待には一歩及ばないという結果に終わりました。
 
数多くの非タッチ型市場も開発モードにありましたが、初期段階を脱して成長するには至りませんでした。透明導電体技術に決して限界はありません。むしろ新興テクノロジーの前に強力な既成テクノロジーが立ちはだかることが珍しくなく、結果パフォーマンスやコスト面で差別化に苦慮する側面が見られました。有機EL照明や有機系太陽電池等がその例です。
 
同じ時期に透明導電性膜およびマテリアル等の各種テクノロジーに状況変化も起こりました。ITO(酸化インジウムスズ)フィルムは、薄さ・耐久性・低コストを武器にITOガラスにおいて急速な進歩を遂げていましたが、やがて組込型タッチテクノロジーの普及がそのアドレッサブル市場の拡大に悪影響を及ぼしました。10年の開発を経てITO代替材料は本格的な市場参入を果たそうとしていましたが、結局マーケットシェアの保護を優先すべくITOフィルムの価格が引き下げられ、それが市場力学に影響を及ぼし業界は困難な再編期へ突入せざるを得なくなりました。つまり代替材料の成功はわずかなもので凡庸だったということです。当社レポートは、10技術・20用途別市場の透明導電体技術をセグメント化した詳細な市場予測を掲載しています。
 
現在:ITOの代替案がついに成功領域に移行し始めている
 
ITO代替材料の市場は常に動いています。事実、業界再編という後退期を経ていくつかの代表的なITO代替材料は活性化しつつあります。銀ナノワイヤーは格安携帯電話、透明LEDフィルム、大型PCAPタッチパネル、透明ヒーター等に商機を見出しています。新興の中国系企業と既存の非中国系企業の両者に向けた銀ナノワイヤーの生産拠点もほぼ中国に移っています。
 
メタルメッシュは進歩し続けています。エッチング加工やエンボス加工(ハイブリッド)を施したメタルメッシュはタブレットを始め、透明アンテナ等のニッチな用途にも既に商業的な活路を見出しています。しかし、組込型タッチテクノロジーの普及がメタルメッシュのアドレッサブル市場に悪影響を及ぼし、ディスプレイ市場の超大型(55インチ超)部門においても組込型タッチテクノロジーが機会を拡大しています。こうした中、従来からのプラズマディスプレイ製品を活用し、エッチング加工メタルフィルムを提供するサプライヤーも出てくるなかで、未償却の大型(幅)ラインへの新規投資の是非といった難しい判断を迫られる(エッチング加工やエンボス加工の)製造業者も出てきています。一方、メタルメッシュへの直接印刷技術についてはその歩みは遅いながらも着実に進歩を続け、既にライン幅5ミクロン未満を実現しパイロット生産に移っています。
 
その他のITO代替材料も方向性の見直しを迫られています。カーボンナノチューブ(またはナノバッド)フィルムのサプライヤーは主流のタッチパネル市場や低抵抗が求められる市場への参入は厳しいことを既に認識していると思われます。従って自社の差別化特性を活用しようとしています。特にその伸縮性を活かして、インモールドエレクトロニクスプロセス等を利用した3Dタッチサーフェスの開発を模索しています。
 
一方、CVD法によるグラフェンは透明導電性フィルム材料としての厳しい展望を打開する道程の確立に苦慮し、高すぎる価格と効率性の低いテクノロジーから脱却できない状態です。ロールツーロール方式の発展とフィルムのドーピングは改善しているものの、コスト効率が良い大型かつ高スループットのロールツーロール転写の実現は依然として難しい状況です。テクノロジーオーナーや開発者の目が透明導電体市場から他市場へと向けられる中でグラフェンに対する彼らの関心も確実に薄れています。
 
Ten-year segmented market forecasts by 10 technologies and 20 applications. The real values are masked as are the legend colours. The legend sequences have also been altered. For accurate and full results including the actual data please refer to"透明導電性フィルム(TCF)2018年-2028年 フォーキャスト、市場、テクノロジー" (Transparent Conductive Films (TCF) 2018-2028: Forecasts, Markets, Technologies).
 
未来:新しい市場と継続的なイノベーション
 
今後、複数のアプリケーションが登場するでしょう。有機ELディスプレイ(プラスチックだけではない)も近い将来商品化される見通しです。これにより、フレキシブル透明導電体技術の機会が創出されます。タッチセンサーは初期段階ではアドオン型として搭載される可能性がありますが、薄膜封止バリアに直接搭載可能なセルレイヤーに移行する確率が高いと思われます。
 
PCAP技術は、(55インチ超の)大型ディスプレイテクノロジーで頭角を現し比較的ローボリュームにもかかわらず大型を実現することにより特筆すべき市場を創出するでしょう。スタンドアロン型モニターに搭載されるタッチテクノロジーもパーソナルコンピューター技術の変化に伴いようやく飛躍が期待できそうです。窓やミラーのデフロスタ等、自動車業界を中心とする透明ヒーターのアプリケーションはますます普及が進む見通しです。インモールドデバイスも自動車や家庭用エレクトロニクスのアプリケーションに商機を見出すでしょう。
 
銀ナノウェアテクノロジーでは、材料のイノベーションと改善が今後も続く見通しです。信頼性の諸問題(シルバーマイグレーション等)への効果的対処に時間がかかりすぎた結果、サプライヤーの技術に対する評価は損なわれ商品化が後退しましたが、この問題はおおむね解消されています。今後の焦点となるのは、抵抗値とヘイズのトレードオフ改善と(既存のレーザーパターニングに対して)効果的なフォトパターニングとフィルムのエッチング加工のための材質とプロセスのエコシステムを可能にすることだと思われます。なお、後者は銀ナノワイヤーがハイボリュームのフレキシブルディスプレイの普及や一部の組込型ITOの代替を狙う場合のカギとなります。
 
メタルメッシュ技術も現状に留まることはないでしょう。直接印刷は引き続き着実な進歩を遂げると思われます。ライン幅は狭くなり、印刷スピードは加速し、ウェブ幅は広がります。テクノロジーはパイロット生産から大量生産へと前進します。エッチング加工の大型メタルメッシュの製造業者は引き続き大型ディスプレイを重視する見通しですが、当社は一部の著名な企業がビジネスから撤退すると見ています。同時に、エッチング・エンボス加工の中・小型メタルメッシュの現存する製造業者のすべてが大型化に移行するとは考えていません。アドレッサブル市場の規模が不確実であることと未償却のレガシー機器がない場合のコスト競争力に対する疑問が大型化を躊躇させる要因となっています。
 
総じて当社レポートで予測したように、透明導電体(ガラス・フィルム)の全市場規模は、2028年までに2017年規模の2倍になると見ています(検討したアプリケーションの範囲内)。しかし、短期的な展望としては「停滞」しておりユースケースではいくらかの成長が見込まれますが、その成長も価格の下落等で相殺されるでしょう。中長期的には新規あるいは大型用アプリケーションの登場により、成長の拡大が見込まれます。
 
技術構成もまた変化して行くでしょう。当社レポートではITOフィルムは短期的には減少するが、長期的には安定するとの見通しています。銀ナノワイヤーは成長期に突入し、今後、急速な成長を遂げる見通しです。2028年までにはITOフィルムに匹敵する市場へと成長していくでしょう。メタルメッシュの中期的な成長は凡庸なものの、長期的には特に直接印刷のコスト競争力が強化され、テクノロジーの新規設備投資の問題点を克服するほど成熟した場合、全体的な展望は新規アプリケーションの方が明るいでしょう。グラフェン、カーボンナノチューブ、PEDOTは主流マーケットから締め出された状態が続くと思われますが、一部(すべてではない)は各々の特性に基づくニッチなアプリケーションにおいて商機を得るでしょう。
 
さらに詳しい分析はぜ当社調査レポート "透明導電性フィルム(TCF)2018年-2028年 フォーキャスト、市場、テクノロジー" (Transparent Conductive Films (TCF) 2018-2028: Forecasts, Markets, Technologies)をご覧ください。このレポートは何年にもわたる調査、無数のインタビューとディスカッション、世界中のカンファレンス、トレードショーへの参加や多くのコンサルティングプロジェクトに基づいています。本レポートは、10技術・20用途別市場の詳細な数値とSQM(サービス品質管理)による市場予測を掲載しています。また、約90社に関して1次情報に基づく知見も提供いたします。詳細なデータを駆使した技術アセスメントとロードマップ等を紹介していきます。
 
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