ペロブスカイト太陽電池のパワーを解き放つ
2022年6月16日

ペロブスカイト太陽電池(PV)は、2009年に登場したばかりの歴史の浅い技術です。その登場以降、破竹の勢いで研究が進められており、他のあらゆるPV技術よりも速いペースで変換効率の向上が見られます。IDTechExの最新調査レポート『ペロブスカイト太陽電池 2023-2033年』では、需要のギャップ、サプライチェーンの革新、新しいアプリケーションなど、ペロブスカイト太陽光発電がもたらす多様な機会を調査しています。
極めて急速に向上する変換効率
ペロブスカイト太陽電池は、そのコストの低さ、薄膜構造、調整可能な吸収能力が可能にする新しい用途において、極めて高い変換効率を示すことが実証されています。その効率の高さは数十年にわたって研究され続けてきたシリコンPVの効率と既に同レベルにあります。また、ペロブスカイトPVの製造には有毒材料や希少材料を使用しないため、スケーラブルな溶液成膜法に非常に適しています。このことが、現在主流の薄膜の代替品CdTe(テルル化カドミウム)やCIGS(セレン化銅インジウムガリウム)などが高価な材料合成コストや材料不足に苦しむ中で、ペロブスカイトPVに優位性をもたらしているのです。
ペロブスカイト太陽電池の高効率性は実証されているものの、長期的な安定性に対する懸念があるため、商用利用はまだ限定的なものにとどまっています。ペロブスカイトは、熱、空気、湿気、紫外線などの環境要因にさらされると劣化することがよく知られています。封入技術や材料工学は、ペロブスカイトの膜の劣化を防ぐうえで不可欠です。こうした価値の高い問題を解決することが、絶好の商機になっています。
新しい用途の実現
ペロブスカイトPVは非常に多用途に使えます。ソーラーファームや屋根など、メジャーな用途で使用することができます。ペロブスカイトモジュールは、シリコンモジュールに比べて90%以上軽量化が可能なため、垂直結合建造物や耐荷重の低い構造物のような新しい用途にも適しています。これらの用途は、現在主流のシリコン系のPVとは相性がよくないことから、ペロブスカイトPVにとってニッチな機会が生まれています。太陽電池において最近注目されているのが、フレキシブルな太陽電池モジュールです。薄膜型ペロブスカイトPVは、当然ながらフレキシブルな設計に非常に適しています。コンフォーマル性により、建物の外観や電子機器に組み込む際の実用性が向上し、審美的な許容度にも対応できるようになります。
IoT(モノのインターネット)の登場により、ペロブスカイトPVは、電源内蔵式のスマートエレクトロニクスにも最適な選択肢になる可能性があります。小型電化製品への電力供給には、通常はバッテリーを使用します。電子機器が数百、数千と使用されている場合、人件費と廃棄する電池の多さから、バッテリーを交換することは持続不可能であると言えます。耐用寿命10年の低コストなPV式デバイスを導入する方が、はるかに経済的です。有機PVを使用した電源内蔵式電子機器は既に商用化の初期段階の最中にあります。この市場の規模はまだ極めて小さく、新規参入の余地が十分にあります。ペロブスカイトPVの利用によって、効率の向上、有機物よりも優れた合成容易性、長寿命化が実現すると期待できます。

ペロブスカイト型太陽電池が可能にするアプリケーション。Source: IDTechExの最新レポート『ペロブスカイト太陽電池 2023-2033年』
見通し
ペロブスカイトPVは他のどの太陽電池技術よりもはるかに急速な進展が見られ、この技術の未来は楽観視できるように思えます。CdTeやCIGSの活性層とは異なり、ペロブスカイトは希少材料や高価な材料を必要としません。合成も容易で、真空や高温を必要とせずに成膜が可能です。フレキシブルなデバイスを作ることができれば、現在主流のシリコンPVが、かさ高さ、重さ、硬さにより対応不可能な新しい用途も切り拓かれます。このような有望な利点にもかかわらず、ペロブスカイト太陽電池の寿命に対する懸念が、いまだ大きな議論の的になっています。
『ペロブスカイト太陽電池 2023-2033年』は、10年間の市場予測、キープレイヤー分析、技術ベンチマーク、コアアプリケーション分野の特定を行います。本レポートでは、太陽光発電技術、サプライチェーン、製造ノウハウの現状と最新動向を調査し、また、ペロブスカイト太陽電池が直面する主な課題、競争、イノベーションの機会も特定しています。技術的分析と新たなトレンドは、最新のリサーチと主要および新興プレイヤーとの一次情報に基づいています。
ペロブスカイト太陽電池の最新動向の把握に、IDTechExの最新レポート『ペロブスカイト太陽電池 2023-2033年』をご活用ください。
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