先進イメージセンサーにおける有望なイノベーション

先進イメージセンサーにおける有望なイノベーション

Dr Isabel Al-Dhahir
先進イメージセンサーにおける有望なイノベーション
IDTechExの調査レポート『最先端イメージセンサー技術 2023-2033年: アプリケーション、市場』では、現在到達している技術水準よりもはるかに高い水準の解像度と波長検出を実現できるさまざまなイメージセンシング技術を取り上げています。これら先進技術の多くは、医療、生体認証、自動運転、農業、化学センシング、食品検査など、数多くの分野で新風を巻き起こすことが期待されています。IDTechExでは、自律技術の重要性の高まりにより、先進イメージセンサー市場が2033年までに5億ドルを超える規模になると見ています。
IDTechEx 調査レポート 『最先端イメージセンサー技術 2023-2033年: アプリケーション、市場』でカバーするエリア。 Source: IDTechEx
 
スペクトル領域の拡大
 
ロボット工学、産業用画像検査、家電においては現行の可視光用CMOS検出器が普及しているものの、単に赤、緑、青(RGB)の強度値を取得する以上の機能を実現する、より複雑なイメージセンサーには幅広い市場機会があります。可視光領域から短波赤外光領域(SWIR:1000~2000nm)までの光の様相を検出できる先進イメージセンサー技術の開発には、現在、多大な努力が注がれています。波長域をSWIR領域にまで広げることで、可視光領域では外観が似ていたり同一に見える物体や物質の識別が可能になり、多くの利点が得られるようになります。つまり、認識精度が大幅に向上し、イメージセンシングの改良や機能向上への道が開かれるのです。
 
特に重要なのは、短波赤外光領域(SWIR:1000~2000nm)でのイメージセンシングに使用する極めて高価なInGaAsセンサーに取って代わる手頃な価格の技術の開発です。これが実現すれば、さらに幅広い用途に対応できるようになるでしょう。自動運転車の場合、SWIR領域でのイメージセンシングにより、可視光領域では同じように見える物体や物質の識別が容易になり、またほこりや霧による散乱光の発生も低減できます。
 
SWIR(InGaAs)センサー以外にも競合する先進技術はいくつかあります。例えば、有機半導体や量子ドットでできた光吸収性の薄膜層をCMOS読み出し回路に追加し、波長検出範囲をSWIR領域にまで広げたハイブリッドイメージセンサーなどが挙げられます。ほかには広帯域化に対応したシリコンがあります。シリコンの特性に手を加えることで吸収域をバンドギャップの限界以上にまで広げたものです。現在は高価なInGaAsセンサーが主流となっていますが、先に挙げたいくつかの新しいアプローチにより価格を大幅に下げられるのは確実で、自動運転車のような新しい用途へのSWIRイメージセンシングの導入への追い風になると期待されています。
 
最先端のイメージセンサーによって実現する新しい機能
 
より広いスペクトル域でのイメージング以外に、さらなるイノベーションが期待できる領域には、撮像範囲を拡大することや、各ピクセルでスペクトルデータを取得すること、時間分解能とダイナミックレンジを同時に上げることなどがあります。この領域における有望な技術がイベントベースビジョンです。従来のフレーム方式のイメージングでは、時間分解能が高いと膨大な量のデータが生成されるため、計算負荷の高い処理が必要となります。イベントベースビジョンでは、センサーの各ピクセルが強度の変化に対応したタイムスタンプを報告するという、光学情報の取得に関してまったく新しい考え方を提示することで、この課題を解決します。そのため、イベントベースビジョンでは、急速に変化する画像領域への時間分解能を向上させると同時に、データ転送とその後に必要な処理を大幅に減らすことが可能です。
 
もう1つの有望なイノベーションが、センサー技術の小型化とコンフォーマル性の向上であり、ロボットアーム、産業用検査機器、家電などの製品にセンサーを組み込むことが従来よりも一層容易になります。これらの技術は、急成長を遂げている小型分光計市場がターゲットにしている用途でもあります。スマートエレクトロニクスとIoT機器の成長が追い風となり、安価な小型分光計は、さまざまな分野において重要性を増しつつあります。標準的な可視光センサーの複雑さと機能性は、高いスペクトル分解能によって可視光域からSWIR領域までのスペクトルを検出できる小型分光計を組み込むことで大幅に改善することが可能です。フラウンホーファー研究機構の研究者たちは、重量1グラムの単価がわずか1ドルの分光計を将来的に実現しようとしています。小型分光計は、物質、物体、色に対する識別能力を強化することで自律効率を向上させるソリューションを低コストで提供することが期待されています。
 
IDTechExの調査レポート『最先端イメージセンサー技術 2023-2033年: アプリケーション、市場』では、次の疑問点に対する見解を提供しています。
  • これら先進イメージセンシング技術の技術成熟度はどのくらいか?
  • 実現の時が迫っている破壊的技術はどれか?
  • 最先端のイメージセンシング技術を探し求めてしている企業はどこか?
  • 最も恩恵を受ける見込みのある用途はどれか?
  • 自律性はイメージセンサーによってどう向上しうるのか?
  • これらの先進技術を商用化する際の課題とは?
 
先進イメージセンサー市場、技術動向をさらに詳しく理解するために、IDTechExの調査レポート『最先端イメージセンサー技術 2023-2033年: アプリケーション、市場』をご活用ください。
 
問合せ先
アイディーテックエックス株式会社
東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービル21階
担当:村越美和子  m.murakoshi@idtechex.com
電話 : 03-3216-7209
 
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