ARディスプレイ技術の未来は?

Sam Dale
VR(仮想現実)ヘッドセットとAR(拡張現実)ヘッドセットは、表面上90%の構成部品が同じです。前者は大衆消費者市場で何百万台も売れているのに対し、後者は主流市場にまだ食い込めていませんが、2つの主要な技術がこの2つの製品のカテゴリーを分けています。ニアアイ光学系も難しい問題の一つですが、ディスプレイシステムも同様です。
 
Commercial status of displays in AR. Source: IDTechEx
 
ARヘッドセットは、今日のディスプレイ産業にとって最も困難な課題のいくつかを抱えています。対象とする用途やディスプレイと組み合わせる光学系技術によって異なるものの、一般的なARヘッドセットディスプレイに必要な要件は以下のとおりです。
  • 周囲の光より明るく、非効率な導波路光コンバイナとも組み合わせ可能なほどの輝度と、ヘッドセットの重さを抑えつつ、適度なバッテリー寿命を実現できる電力効率
  • 通常のメガネとほぼ同様の形状の細いフレームに収まるほどに小型かつ軽量
  • テキストや通知内容が読みやすく、または完全な複合現実(MR)体験を可能にする程度の高い解像度
  • ヘッドセットに対する部品表(BOM)の予算に収まる程度に低コスト
 
IDTechExの調査レポート『VR/AR/MR向けディスプレイ 2024-2034年: 予測、技術、市場』で詳細を解説している通り、これらすべてを同じパッケージで満たすことは容易なことではなく、複数のアプローチの可能性があります。そして、疑問を投げかけます。次世代のARデバイスは、どのディスプレイ技術が主流になるのだろうか?
 
マイクロLEDマイクロディスプレイが大量採用されるのか?
 
マイクロLEDマイクロディスプレイは、最も注目されているARディスプレイ技術かもしれません。このディスプレイは、装着者の没入感を最大限まで高めることよりも、可能な限り邪魔にならないようにすることを目的とした必要最低限度のARデバイスの選択肢として、ますます一般的になりつつあります。これまでのところ、中国のJade Bird Display(JBD)がこの分野をリードし、同社のマイクロディスプレイはビュージックス、TCL、OPPOのヘッドセットに搭載されています。IDTechExが知る限りでは、マイクロLEDを搭載した市販のARヘッドセットでJBDのパネルを使用していないものはありません。
 
マイクロLEDディスプレイは、体積に対する輝度比率(多くの競合技術とは異なり、体積の増加につながる別の光源で照らすのではなく、パネルが直接発光する)やピクセル密度の最大化が最大の強みですが、解決すべき重大な問題もあります。JBDが提供するのは今のところVGA(640x480)解像度で(おそらくパネル欠陥率を最小限に抑えるため)、フルカラーディスプレイが必要な場合には、3枚の単色ディスプレイの出力と現行製品のプリズムを組み合わせています(JBDは単板のソリューションを開発中とのこと)。しかし、IDTechExのアナリストが試用したところ、JBD製パネルを使用したヘッドセットは引き込まれるような視覚体験を実現しており、これまでターゲットにしてきた用途では、これらのディスプレイは十分過ぎるものとなっています。
 
レーザービーム走査型ディスプレイ:再投入できる状態か?
 
大規模な製造はマイクロLEDマイクロディスプレイにとって解決が最も難しい問題であることは今も変わっていません。複雑な物質移動過程と高い欠陥率が大きな障害となり、この市場に商用サービスを提供しているのは今のところJBDだけです。レーザービーム走査型(LBS)ディスプレイは、変調レーザービームを使用して描画を行い、間もなくこの分野に競争をもたらす可能性があります。このディスプレイは、マイクロLEDマイクロディスプレイとほぼ同等に小型化が可能で(オーストリアのスタートアップ企業であるTriLite Technologies製のLBSディスプレイ「Trixel 3」の体積は1立方センチメートル未満)、平行性の高い出力光により、導波路光学系と効率的に組み合わせることが可能です。また、マイクロLEDとは異なり、確立されたハードウェア技術に全面的に基づいています。グーグルがプロジェクトアイリスのARヘッドセットでこのタイプのディスプレイを使用していたようですが、このプロジェクトは現在、中断あるいは中止になっている可能性があります。
 
しかし、LBSの欠点である、環境感受性と微小なアライメント公差が要求されていることは、その採用を遅らせていますが、こうした問題はソフトウェアによって軽減できます。視覚的アーチファクトを発生させる可能性のあるハードウェアの技術なしに解像度を上げるのは困難ですが、必要最低限度のARデバイスで使用する場合は、大した制約になりません。
 
より確立された技術がその価値を示す
 
OLEDoS(OLED on Silicon、別名:マイクロOLED)ディスプレイやLCOS(Liquid Crystal On Silicon)ディスプレイはより確立されたディスプレイ技術であり、ARディスプレイ市場の残りの大部分を占めていますが、それにはもっともな理由があります。OLEDoSは比較的低コストで高解像度を実現しており、XREALのような低コストの消費者向けARヘッドセットにとって最適な技術ですが、輝度が比較的低いため、ハイエンド向けデバイスのほとんどで使用されている導波路光学系との互換性がありません。一方LCOSは、最も没入感の高いMR対応ARデバイスにとって最適な技術とされがちですが、輝度効率と高解像度パネルの比較的高いコストが問題となります。
 
今後の展開とさらなるインサイト
 
上記の評価から明らかなことは、今後10年間、さまざまなディスプレイ技術がARでの地位を維持する可能性が高いということです。IDTechExの調査レポート『VR/AR/MR向けディスプレイ 2024-2034年: 予測、技術、市場』では、空間コンピューティング向けディスプレイを取り巻く状況を詳細に分析しています。本レポートにおいてIDTechExは、ディスプレイ技術のベンチマーク評価を行った際、技術的性能と商業的実績との間に負の相関関係があることが分かりました。そこでヘッドセット開発者に問われるのは、高額化やサプライチェーン管理の難化に対して、性能の最大化にどの程度の価値を置くのかということです。さらに、本レポートでは、XR ディスプレイ技術分野のベンチマークと概要に加え、10 年間のきめ細かな市場予測と、対象技術の成功の可能性評価が含まれています。ぜひ、サンプルページをダウンロードしてご確認ください。
 
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