EVバッテリー用防火材料の選定
2025年2月10日
電気自動車(EV)の販売台数は2024年も伸び続けており、IDTechExの調査によると、地域差があるものの、2024年の世界全体でのEV販売台数は2023年から24%増加しています。EVが車両総数の大半を占めるようになる中、安全性はこれまで以上に重要になります。EVの方が内燃機関車よりも火災発生頻度が低いことがほとんどのデータで示されていますが、発生率がどうであれ安全性を無視するわけにはいきません。試験方法や規制が変化し続ける中、IDTechExの調査レポート「EVバッテリー用防火材料 2025-2035年:市場、トレンド、予測」では、EVバッテリー用防火材料が2024年から2035年にかけて15%の年平均成長率で成長すると予測しています。
この記事では、EV用バッテリー設計者が考慮すべき重要事項と、潜在的な材料について取り上げます。
セル形式
まず考慮すべき事項の1つがバッテリーセルの形式です。IDTechExの調査では、2024年には市場の約58%が角形セルを、続いて22%が円筒形セルを、残りがパウチ型セルを使用していました。セルの形式はモジュールやパックレベルでの保護には影響しないかもしれませんが、セル間材料には確実に影響します。
角形セルシステムやパウチ型セルシステムではセル間にシート状の材料を用いるのが一般的で、円筒形セルシステムでは発泡封止材が好まれる選択肢です。シートは円筒形セルシステムにも用いることができ、発泡封止材はパウチ型や角柱型にも使用できますが、いずれにしてもあまり一般的ではありません。
故障モードもセルの種類によって異なり、円筒形セルや角形セルはセル上部にある通気口から排気することが一般的であるため、防火材料の配置が少し予測しやすくなっています。
熱管理コンセプト
セルの温度をどのように管理するかも考慮すべき重要事項です。人気のある手法の1つが、水グリコール冷却剤が通る冷却板をセルの上部か下部に配置することです。セル同士が断熱されるため、低温条件でもセル内の温度を維持しやすくなります。熱暴走を起こしたセルとパック内の残りのセルとの間の熱伝導を防ぐのにも有効です。
2つ目の選択肢は、セルの側面も冷却するか、セル間に放熱材料を設け、セルからできる限り多くの熱を逃がすことです。選択する手法が、セル間に配置する材料や材料の組み合わせの選定を左右します。例えば、発泡材やエアロゲルは熱伝導率が非常に低いのに対し、封止材や相変化材料は熱伝導率が高くなる傾向があります。
材料選定
セルの形式と熱管理戦略を決定してからも、有効な選択肢になり得る材料カテゴリーやバッテリーケミストリーが数多くあります。
低熱伝導率や低密度などの重要数値指標では、エアロゲル、セラミックブランケット、発砲封止材が優れた性能を発揮しますが、それだけですべてが決まるわけではありません。多くの場合、構造要件やUL2596の試験要件を満たすために材料を組み合わせることが必要になります。そうなると、必要な密度も一般的に上昇することになります。トーチアンドグリット(TaG)テストで試料を高温の炎(1200°C)とアルミナ粒子の吹き付けに交互に当てるなど、UL2596の試験は過酷なものとなっています。

熱伝導率と密度は重要なパラメータだが、それだけですべてが決まるわけではない。出典: IDTechEx
そのため、一般的に材料サプライヤーは、複数の機能を発揮し、いくつもの組立工程を必要としない材料を生産しようとしています。サプライヤーからの人気が高まっている選択肢は、モジュール、セルホルダー、セル間スペーサーの構造部材にすることが可能な、防火性や膨張性を備えたポリマー・複合材製の部材です。これらは、通常の使用では断熱性が低下し、密度は上昇するように思えますが、高温でも優れた断熱性を発揮しつつ、いくつもの他の材料を必要としない可能性があります。例としては、SABIC(サウジ基礎産業公社)、パイロフォビック・システムズ、旭化成などの企業が挙げられます。
バッテリー設計者にとっての主な懸念事項の1つがシステムのコストです。防火材料を加えるとコストが上がりますが、追加コストは材料の選択肢によって大きく変わる可能性があります。その計算に含まれる材料コストは、単にkg当たりのコストというだけでなく、要求される性能を得るために必要な量を表します。非常に低コストで高い電気絶縁性を備えているマイカは、通常、十分な防火性を発揮するには層を厚く(重く)する必要があります。これまでコストがネックとなっていたエアロゲルは、正しく導入されれば優れた断熱性と防火性を発揮できます。前述のように、材料単体で複数の機能を提供できる場合、その追加コストがシステム全体のコストを抑えることができます。
概要と展望
防火材料の選択は、セルの形式、パック設計、熱管理手法、材料コスト、システムコスト、対応すべき規制などの要素をはじめ、幅広い要素を伴うものです。どの材料にも独自のトレードオフがあるため、バッテリー設計ごとに評価する必要があります。
現在の市場に関しては、発泡封止材とマイカが材料需要の大半を占めているのが現状ですが、市場の発展に伴い、新たに登場する選択肢が市場シェアに食い込むようになるとIDTechExは予測しています。その新たな選択肢としては、エアロゲル、膨張性ポリマー、コーティングなどが挙げられます。IDTechExの新しい調査レポート「EVバッテリー用防火材料 2025-2035年:市場、トレンド、予測」では、セラミックブランケット、セラミックシート、マイカ、エアロゲル、コーティング、封止材、発泡封止材、圧縮パッド(防火性を備えたもの)、相変化材料、ポリマー(防火性を備えたもの)などの材料カテゴリーについての解説、市場での採用、有力企業、予測をご覧いただけます。
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