自動車メーカーがリチウムイオン電池リサイクルに投資する理由

自動車メーカーがリチウムイオン電池リサイクルに投資する理由

Corinne Stollery
Pile of lithium-ion batteries on top of the recycling symbol
これまでは使用済みバッテリー不足によりリチウムイオンのリサイクル市場には成功の機会がほとんどありませんでした。電気自動車(EV)への移行により、状況は変わりつつあります。リサイクルによりバッテリー材料の供給を自国で賄えるようになり、金属価格の変動リスクをヘッジすることや持続不可能な鉱物資源への依存を低減することも可能になります。供給や規制、環境などの動機によりバリューチェーンに関わるさまざまなステークホルダーが、価値ある使用済みリチウムイオン電池が大量に出回るのに備えてリサイクル能力の拡大に努めています。
 
リチウムイオン電池をリサイクルして価値ある材料を回収するのは簡単そうに見えますが、現実はもっと複雑です。リサイクルの収益性はEV用バッテリーのトレンド次第であり、自動車メーカーはバッテリーサプライチェーンの循環性を促進する役割を担います。

リチウムイオン電池リサイクルの経済性

リサイクルの経済性は主に3つの要素に左右されます。リチウムイオン電池の化学的性質、金属価格、加工コストです。これらはリサイクル業者の規模に比例して下がる見込みです。 EV用バッテリー、特に正極材の化学組成はさまざまなものがあります。EV用バッテリーのエネルギー密度向上に対する需要により、ニッケル含有率の高い正極材へのシフトが起きていますが、バッテリーのコストを抑えたいという要望により、より安価なLFP正極材が好まれており、最近では一部の自動車メーカーがエントリーモデルでLFP正極材に切り替えています。これはリサイクル業者が使用済みEV用バッテリーから取り出せる金属の価値に影響を与えそうです。
 
LCO正極材はコバルト含有量が高いため取り出せる価値が最も大きくなりますが、これらが通常使用される家電製品はリサイクルされるリチウムイオン電池のほんの一部であるため回収ネットワークを作ることは困難です。IDTechExの最新調査レポート『リチウムイオン電池のリサイクル市場 2022-2042年』では、各正極タイプのリサイクル価値を比較しています。IDTechExはリチウムイオン電池のリサイクル市場の経済性を評価するために、金属価格とともにこれらのトレンドとその影響を調査しました。

自動車メーカーの参入

自動車メーカーは「拡大生産者責任(EPR)」の規制対象となることがよくあります。これはEV用バッテリーが寿命に達したときにその責任を負うことを意味します。そのため使用済みバッテリーを効率的かつ経済的に廃棄するルートを開発することは自動車メーカーにとって最大の利益となり、リサイクルの環境認証を取得することも有益なことになります。
 
フォルクスワーゲンはフォルクスワーゲン・グループ・コンポーネンツを通じて垂直統合型のリサイクル・再利用事業を開発しており、2021年にはリチウムイオン電池をリサイクルするためのパイロットプラントを稼働させました。ほとんどのEVメーカーとは異なりルノーでは、完全所有型のオプションだけでなく、3つのモデルでバッテリーをリースするスキームも運用しています。ルノーはヴェオリアなどのパートナーと再利用用途やリサイクルを利用してEV用バッテリーの寿命末期(EOL)の管理を最適化しています。テスラによればネバダ州のギガファクトリーでバッテリーリサイクルシステムを開発中とのことですがこれまではサードパーティのリサイクル業者に委託していました。またBMWはリサイクル業者と戦略的パートナーシップを結んでおり、リサイクルを念頭に置いたセルの設計を模索しています。
 
自社EVの持続可能性向上を模索しているこれら主要自動車メーカーの参入は、将来のバリューチェーンにおいてリチウムイオン電池のリサイクルが担う役割への期待を反映したものです。自動車メーカーは使用済みリチウムイオン電池に対する法的責任を負う可能性があるばかりでなく、その影響を受けるトレンドもリサイクル事業の収益性に影響を与えます。他のセクターのリサイクル業者とパートナーシップを築くだけでなく、自動車メーカー自身が行動を起こし独自のプロセスと供給の循環性に投資を行っています。
 
世界のリチウムイオン電池リサイクル市場:セクター別 出展: IDTechEx 調査レポート『リチウムイオン電池のリサイクル市場 2022-2042年』

現在の市場状況

IDTechExは世界の約90社のバッテリーリサイクル業者を特定し、現在のリサイクル能力のほとんどが中国にあることを確認しました。2021年にはリサイクルに利用できるリチウムイオン電池の数が不足したことで市場が不均衡な状態になりました。リサイクル業者が直面する最大の課題の1つに、使用済みバッテリーが大量発生する時期が挙げられますが、使用済みEV用バッテリーが多く出回り始めるまでは、バッテリー製造時に発生するスクラップが生産能力の向上の一助となる可能性があります。
 
世界のリサイクル能力は飛躍的に向上し、2042年には1,200万トンのリチウムイオン電池がリサイクルされることになるでしょう。IDTechExの最新調査レポート『リチウムイオン電池のリサイクル市場 2022-2042年』は、現在の市場を分析し、新しい産業の現在の技術、政策、経済の動向を解説しています。また地域別、セクター別、電池化学分野別の内訳を含む20年間の市場予測を提供します。
 
さらに詳しくは, 調査レポート『リチウムイオン電池のリサイクル市場 2022-2042年』でご確認ください。

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本調査レポートの担当アナリストであるCorinne Stolleryが、12月15日(水)に「リチウムイオン電池リサイクルの今後」と題したWebinarを開催します。事前登録して、ぜひご参加ください。
 
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