企業のネットゼロ目標が、ゼロエミッショントラックの採用を促進

Dr David Wyatt
Electric truck at a charging station
今や事業活動の持続可能性が、主要企業の役員会で重要な検討課題として取り上がられるようになっており、そのことが、ゼロエミッショントラックに対する大きな需要をかき立てています。これまでなかったような異常気象現象を通じて、気候温暖化の影響がますますはっきりとしつつある中で、世界の目は現在、気候変動による脅威へと向けられています。各国政府が温室効果ガスの排出の大幅な削減に向けて動き出し、消費者が自分が使用する製品の環境フットプリントに意識を向け始めるようになったことを受けて、企業は、気候危機に対して自社が貢献できる仕組みを見つけることを迫られています。保有トラック車両のパワートレインをディーゼル内燃機関からゼロエミッションに切り替えることで、二酸化炭素排出量が大幅に削減されるとともに、環境に配慮している企業であることを顧客に明確に示すことができます。
 
IDTechExの調査レポート『電気・燃料電池トラック 2023-2043年』は、急激に成長するゼロエミッショントラック市場の将来を検証し、バッテリー電源、プラグイン・ハイブリッド、水素燃料電池トラックを網羅しています。このレポートでは、ゼロエミッショントラックに関する技術的・経済的側面を検証しており、またヨーロッパ、米国、中国といった主要市場に着目した中型および大型のゼロエミッションのトラックに関する IDTechEx の詳細な見通しが2043年まで提示されています。IDTechExでは、小型商用EVが今や都市部で比較的ありふれたものになっているのと同じように、BEVをはじめとするゼロエミッショントラックについても、まずは都市や地方の路線に導入され、その後は至る所で頻繁に見かけるようになると予想しています。
 
IDTechExは、世界のゼロエミッショントラック市場が今後10年間にわたり37.1%の年平均成長率で急成長すると予測しており、世界の中型・大型ゼロエミッショントラック市場は2043年までに年間2,000億ドル以上の規模に達すると見込んでいます。
 
Global Zero-Emission Truck (Medium and Heavy-Duty) Market Revenue Forecast: Split by Region. Source: IDTechEx - 『電気・燃料電池トラック 2023-2043年』

ゼロエミッショントラックに対する大量の法人需要

大規模なトラックフリートを運用する企業の多くは、今後数十年以内にネットゼロ排出を達成するという国を挙げての取り組みに沿って、温室効果ガスの排出を削減するための独自の目標とタイムラインを設定し始めています。ゼロエミッショントラックの採用は、道路輸送貨物に依存している企業が環境に対する約束を果たすうえで欠かせないものとなるでしょう。
 
イケア、HP、マイクロソフト、ネスレ、ユニリーバなどが参加する環境NGOのセリーズは、米国環境保護庁に対し、中型・大型車の排出基準を強化して、電気自動車に移行中のフリートオペレーター、トラックメーカー、部品サプライヤーをサポートするよう訴えています。
 
実車両によるパイロットテストにおいて、現在のバッテリー・充電技術で、短い配送ルート中心の日々の輸送業務に必要な要件を満たせることが実証されたことを受けて、多くの企業が自信を持ってBEVトラックの大量発注を行えるようになりました。BEVトラックの長距離での運用には依然として課題が残るものの、米国運輸省によれば、米国の輸送貨物の50%は1日当たりの移動距離が100マイル未満であるとされています。

トラックメーカーはパワートレインの移行に投資

トラックメーカーは、内燃機関の燃料効率が向上したとしても将来要求される水準の排出ガス削減を実現することは不可能であると認識しており、ゼロエミッションのパワートレインの開発に多額の投資を行っています。主要トラックメーカーは現在、最初の試作品のテスト段階から商用モデルの第一世代の開発段階へと進みつつあります。トラックメーカー自身による積極的な取り組みは、大きなディーゼルエンジンからの移行が着実に進んでいることを業界全体が理解していることを明確に示しています。
 
欧州の主要トラックメーカー全社のCEOが署名した欧州自動車工業会(ACEA)の2020年12月の声明では、欧州の2050年のカーボンニュートラル目標として、2040年までに、新車販売される商用車はすべて化石燃料フリーにする必要があることが確認されました。ボルボ・グループは、2050年までに走行車両のネットゼロ排出を実現するため、2040年に自社車両のネットゼロ達成を目標としています。同様にダイムラー・トラックは、北米、欧州、日本の主要販売地域において2039年以降はCO2ニュートラルな車両のみを販売することを目指しています。スカニアについては、欧州における全販売台数の50%が2030年までにEVになる可能性があることを示唆しています。

トラックの日々の稼働状況を理解することがゼロエミッショントラック導入の鍵に

BEVのパワートレインは、現在のディーゼルトラックと同じ航続距離や運用上の柔軟性を1回の充電では実現できないため、導入の際は事前のより入念な検討が必要となります。このため、トラックメーカーはコンサルティングサービスを提供しており、顧客と協力して業務に必要な日々のエネルギー量を分析したうえで、その要求事項に合うように車両と充電インフラを適合させようとしています。モジュール式のバッテリーソリューションや、電動モーターの幅広いサイズ展開により、顧客は自分の用途に適した車両を手に入れられるようになります。顧客との協力は、このような初期世代のBEVトラック車両の導入を成功させるうえで不可欠になるでしょう。
 
燃料電池トラックが、長距離用途向けのゼロエミッションソリューションとなる可能性があります。燃料電池システムは、トラックに貯蔵された加圧水素を燃料とするため、バッテリー式電気システムよりもエネルギー密度が高く、したがって航続距離の点でも優れています。水素を燃料とすることには、柔軟性の点でもメリットがあります。燃料補給時間はディーゼルに匹敵し、バッテリーの充電時間よりもはるかに短くなります。こうしたことを誘因として、ヒョンデ、トヨタ、ダイムラーをはじめとする主要トラックメーカーはこの技術への投資を行っています。しかし、FCEVを真の低炭素ソリューションにするのに必要な低炭素の「グリーン」水素や「ブルー」水素は、現在のところ極めて少なく、高コストでもあります。現在使用されている安価な「グレー」水素は、天然ガスから作られたものであるため、実質的には形を変えた化石燃料です。燃料電池トラックの運用が軌道に乗るかどうかは、低炭素の水素製造に対する政府レベルでの積極的な投資や、水素流通網の構築、水素補給インフラの広範囲での整備がなされるかどうかにかかっています。これを実現するのに時間がかかればかかるほど、その間に、BEVパワートレインがバッテリーのエネルギー密度、パワートレインの効率、急速充電、コスト削減の面でさらに先行することになります。燃料電池トラックの開発は、動く目標を追っているというわけです。
 
さらに詳しくは、IDTechExの調査レポート『電気・燃料電池トラック 2023-2043年』で、ご確認ください。
 
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