フォトニック集積回路向け新材料の探究
2025年3月3日
フォトニック集積回路(PIC)は、複雑な光学機能を小型化してチップに搭載したもので、半導体業界向けに開発された製造プロセスが用いられています。EIC(電子集積回路)と比べると、PICには大きな長所があります。光は電子と比べて約3倍の速度で移動するため、はるかに高いデータ転送処理能力を持ち、伝送損失もEICの抵抗損失と比べると一般的に大きく低減します。これらの特性により、光導波路は伝送線路と比較して、データ転送効率の向上(最大10倍)、帯域幅拡大(100倍)、遅延の大幅短縮(0.3倍)、エネルギー節減が実現できます。加えて、PICは最新のCMOSプロセスに組み込むことができ、既存の電子装置と組み合わせることも比較的容易であるため、データ通信技術の発展におけるPICの汎用性と有効性を向上させています。
PICトランシーバーは、データセンター内のノード間接続を高速化すると同時に消費電力を低減し、より大規模なAIモデルの学習と実行を可能にするため、AIの発展に伴って急速に不可欠なツールになりつつあります。IDTechExの調査レポート「シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2025-2035年:技術、市場、予測」 では、この用途が主な牽引要因となり、PIC市場は2035年までに540億ドル超の規模になると予測しています。PICの影響は5G基地局間接続、LiDAR、さらにはフォトニック量子コンピューティングなど、他の多くの用途にも及ぶことになるでしょう。
シリコンフォトニクス:なぜ代替プラットフォームが重要か?

フォトニック集積回路プラットフォームの機会は今後10年で拡大する見込み。出典:IDTechEx
既存の半導体プロセスを利用できるシリコンフォトニクスは、PIC材料として最も普及度の高い部類に入ります。最も多く使用されているのは、シリコンとシリカを材料としたSOI(シリコン・オン・インシュレーター)プラットフォームです。成熟ノードのプロセスと互換性があることから、ファウンドリ市場の多くの企業がPIC製造に投資しています。TSMCが2024年に65nmのシリコンフォトニクス製造プロセスを導入したことからも、この技術の重要性が浮き彫りになっています。今後10年でこの市場が成長するにつれ、シリコンフォトニクスの欠点を補う代替材料の機会も拡大していくと見られています。
SOIシステムのシリコンを 窒化ケイ素(SiN) に置き換えることで、新たなシリコンフォトニクスプラットフォームの選択肢が生まれます。窒化ケイ素は低損失と高い電力効率を特長とし、幅広い光透過窓として利用できます。しかし、製造エコシステムはまだ不十分なうえ、シリカとの誘電率に大差がなく、占有面積も大きくなります。そのため、材料の光透過範囲の広さが最も重要視されるガス検知器やバイオセンサーなどの通信以外の用途で主に使用されています。
シリコンは間接遷移型半導体であり、発光効率は高くないため、レーザーや光検出器を組み込むにはシリコンをIII-V族材料と組み合わせる必要があり、プラットフォームの複雑さが増すことになります。この問題は、 モノリシックInP(リン化インジウム) のプラットフォーム上にPICを構築することで解決します。InPは直接遷移型半導体であることから、光源や光検出器に適しており、すでに通信分野での利用が進んでいます。ところが、InPをPICに使用した場合は、一般的にシリコンを使用するよりも吸収損失が大きくなるうえ、ウエハーの大型化にコストがかさみ、結果として高価となってしまいます。
これらの要因から、モノリシックInPの普及はあまり進んでおらず、代わりにシリコンフォトニクスのプラットフォームに組み込まれることが多くなっています。しかし、IDTechExは「シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2025-2035年:技術、市場、予測」のプラットフォーム材料のベンチマーク評価で、モノリシックInPはPIC材料の中で最もバランスの取れた性能を発揮すると解説しており、今後10年間でコスト削減が進むと見込まれていることから、市場全体での重要性が高まると予測しています。
薄膜ニオブ酸リチウム(TFLN)を使用したPICは、技術成熟度レベルが低い状態にあります。TNLNの化学的安定性が要因で、標準的なCMOSプロセスとの互換性が低いため、シリコンと同様に光源や検出器として何か別の材料を組み込む必要があります。しかし、TFLNは低損失と適度なポッケルス効果のおかげで電気光学性能にも優れているため、量子システムや超高スループットの光トランシーバーなどの高性能光変調器用途に最適です。
チタン酸バリウム(BTO)は、知られている中でも屈指のポッケルス効果を示し、電気光学係数もTFLNの100倍と非常に高いため、変調性能に寄与する代表的な物質となっています。ただし、TFLNと比較して損失が大きいため光トランシーバー用途での有用性は限られており、変調効率が最優先事項である量子フォトニクスシステムこそが、BTOにとって最適なPMF(プロダクトマーケットフィット)であると考えられます。これは長期的な観点からは重要なことですが、スケーリングに課題が生じると見られています。TFLNとは異なり、BTOにはオープンなPDK(プロセスデザインキット)がなく、このことも導入を阻む課題となっています。
フォトニック集積回路の未来
IDTechExは、今後もSOIがPIC市場で主流の座を占め続けると分析しています。その一方で、通信分野以外にも用途が拡大していることや、コンピューティングにおいてこれまで以上の変調速度が求められていることから、モノリシックInPとTFLNが市場シェアを拡大していくと予測しています。
シリコンフォトニクスの市場シェアは全体として縮小傾向にあるものの、依然として成長を続けると見込まれており、IDTechExの調査レポート「シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2025-2035年:技術、市場、予測」では、10年間で年間平均成長率(CAGR)20%で成長する予測しています。本レポートでは、シリコンフォトニクスと最新プラットフォームを比較し、キープレーヤーと用途(AI向け光トランシーバー、CPO、プログラマブルフォトニクスなど)を概説した上で、市場の成長を予測しています。
さらに詳しくは、IDTechExの調査レポート「シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2025-2035年:技術、市場、予測」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。
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