IDTechEx技術ハイライト2020: 食品およびスマート農業(AgTech)

IDTechEx技術ハイライト2020: 食品およびスマート農業(AgTech)

IDTechEx技術ハイライト2020: 食品およびスマート農業(AgTech)
2020年は、COVID-19が生産現場から消費者までの食品サプライチェーン全体に影響を与えており、食品・農業業界にとって厳しい年となりました。労働者の移動の制限、食品生産施設の閉鎖、消費者需要の予想外の変化などの事象が、食品サプライチェーンの不安定さと柔軟性のなさを浮き彫りにし、農家、企業、消費者にとって厳しい課題を生み出しています。今回のパンデミックによって、世界の食肉産業と、動物由来感染症の流行におけるその役割にもスポットライトが当たっています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、鳥インフルエンザの発生や2002年に中国を襲ったSARSの初期流行など、食肉業界に関連する一連の感染症の中では最新のものとなっています。
 
しかしながら、COVID-19によって引き起こされた危機は、世界の食品・農業分野、特に代替的で斬新な食品システムのためのいくつかの商機をもたらしました。
 
特に注目度が急上昇しているのが「垂直農法」です。垂直農法とは、屋内で管理された環境下で作物を重ねて栽培することで、都市の中心部を含むほとんどの場所で年間を通じて高効率な作物生産を可能にするものです。迅速な現地生産を可能にすることで、垂直農法は食品が消費者に届くまでの移動距離を減らし、現地の需要の変化を反映して生産量を増やすことができるようになります。垂直農法は、スーパーマーケットの流通センターやその周辺に設置することができ、収穫後1日以内に大量の新鮮な農産物を消費者に届けることができ、パンデミックの最悪の時期に露呈したサプライチェーンの問題を回避することができます。
 
2020年、投資家たちはこの可能性に気付き、垂直農法に資金を投入しました。2020年10月には米国企業のPlenty社がシリーズDの資金調達において1億4000万ドルを調達し、ほんの数週間前にはベルリン拠点のInFarm社がシリーズCの資金調達で1億7000万ドルを調達しています。しかしながら、垂直農法のこのような利点や調達資金にもかかわらず、課題が存在します。多くのスタートアップ企業は、ランニングコストと高額な初期費用に頭を悩ませています。後々のコスト低減につながる高額な自動化装置か、安価であるが運用コストが高額になる可能性のある手動式装置かの難しい選択を迫られるからです。
IDTechExの調査レポート「垂直農法 (ヴァーティカルファーミング):2020-2030年」では、垂直農法の成否を左右する可能性のある主要な技術・市場要因を分析しています。
 
Vertical farming could enable highly efficient crop production, disrupting food supply chains. Image source: Plenty
このパンデミックから恩恵を受けたもう1つのフードシステムが、代替タンパク質の分野です。COVID-19の感染爆発の影響を受けて食肉包装施設が閉鎖したことに加えて、食肉業界に対する消費者の懐疑的な見方が高まったことにより、植物由来の代替肉の売上が急増しました。ニールセンの報告によれば、米国における代替肉製品の売上は、5月2日までの9週間で264パーセント増加したとのことです。代替タンパク質の業界団体であるThe Good Food Instituteの報告によれば、2020年第1四半期に9億3,000万ドルが代替タンパク質の分野に投資されており、これは2019年に調達された総額を上回る額となっています。
 
この分野を取り上げたIDTechExの調査レポート「植物由来肉および培養肉 2020-2030年」によれば、この傾向は継続し、新しい代替肉の市場規模は2030年までに300億ドルを上回ると予想されています。この市場が成長するにつれ、製造業者、ハードウェアメーカー、化学企業など、バリューチェーン内の各企業には大きな機会がもたらされます。これは特に、動物培養細胞から作られる肉製品や新しい発酵技術に由来するタンパク質など、新たな方向において大きな技術進歩が起こることによるものです。
 
COVID-19のパンデミック以外では、食品と農業の分野で商機が増えています。2020年、欧州連合の行政機関である欧州委員会は、合成農薬の使用を50パーセント削減し、合成肥料の使用を20パーセント削減するという「グリーン・ディール」農業計画を発表しました。先日、ジョー・バイデン氏が次期米国大統領に選出されたことは、米国も持続可能性への注力を今後数年間で高めていく可能性があることを示唆しています。
 
農業技術の分野で、これにより恩恵を受ける可能性があるのが、農業用生物製剤の業界です。農業用生物製剤とは、作物を保護・強化する天然由来の手段の総称であり、バイオスティミュラント、生物農薬、生物肥料などが含まれます。鉱物原料由来の小分子や化学物質をベースにすることが多い従来の化学農薬とは異なり、農業用生物製剤は、植物抽出成分、昆虫フェロモン、作物のマイクロバイオームを操作する遺伝子組み換え細菌など、幅広い製品に及んでいます。
 
農業用生物製剤は急速に成長しています。この市場は過去10年間で500パーセント拡大しており、これは化学農薬市場の10倍の成長率となっています。
 
農業の持続可能性に向けた推進力が、この成長の大きな要因となっています。生物製剤は天然由来であるので、作物保護用途の化学農薬と比べて環境への悪影響が少ないことが期待されています。捕食性昆虫や、殺虫作用のある化合物を生み出す細菌のような生物学的な作物保護の方法も、畑に散布する必要のある合成化学物質の量を減らすのに役立つ可能性があります。さらに、植物や細菌に由来する生物製剤の生産は、化学農薬の合成と比べて二酸化炭素排出量が少なくなる可能性があります。これら持続可能性上の利点は、農薬のイノベーションを強く求める声と結びついたものです。農薬耐性の向上とますます厳しくなる農薬関連規制のせいで、農家が作物を保護して収穫高を上げるための手段が減っています。農業用生物製剤は、この状況を変えるのに役立つ可能性があります。
IDTechExの調査レポート「バイオスティミュラントとバイオ農薬 2021-2031年: 技術、市場および見通し」では、農業用生物製剤を取り巻く新しい技術分野の概要を提供し、業界が直面する商機と課題を評価し、今後10年間の市場規模を予測し、2031年までに農業用生物製剤の市場は195億ドルに達すると予測しています。
 
IDTechExは、バイオスティミュラントとバイオ農薬市場が拡大すると予測しています。 出展: IDTechEx 「バイオスティミュラントとバイオ農薬 2021-2031年: 技術、市場および見通し」
 
食料生産が2021年以降も進化を続けていく中で、合成生物学、ゲノム編集や、その他の遺伝子技術が農業においてますます重要な役割を果たすようになります。CRISPRやTALENなどのゲノム編集技術の周辺は特に活気づいており、これらの技術を用いることで、ゲノムを低コストで正確に書き換えて作物を改良できるようになる可能性があります。2020年は、農業分野でこうした技術に大きな動きはなかったものの、Calyxt社のCalynoブランドの高オレイン酸大豆油が幅広く浸透しました。これは、ゲノム編集を農業で初めて商業的に用いたものです。2020年3月には、10万エーカーを超える米国の農地にCalyno大豆が作付けされ、Calyxt社では2020年末までに高オレイン酸大豆の作付面積において25パーセント以上の市場シェアを獲得することを見込んでいます。
 
農業における遺伝子技術は、AgTech業界全体の発展も後押しするでしょう。カリフォルニアのスタートアップ企業Pivot Bio社は、遺伝子工学を用いて窒素固定細菌を利用した栽培添加剤を製造し、バイエルの合弁事業であるJoyn Bio社は、同様のバイオスティミュラントを作成するための合成生物学技術を開発しています。遺伝子技術は、代替タンパク質の分野で利用が進んでいく可能性もあります。バイオデザイン企業のGeltor社は、合成生物学を利用して、美容業界や栄養食品業界向けにデザイナータンパク質を製造しています。一方でメンフィス・ミーツなどの培養肉製造企業は、動物培養細胞から本物に近い肉製品を作れるようにするため、ゲノムマッピングや改変ツールの使用について研究を行っています。IDTechExは、農業における遺伝子技術に関して調査レポートを発行しています。詳しくは「農作物バイオテクノロジー 2020-2030年」を、ご覧ください。
 
2020年に見られる課題にもかかわらず、AgTechの見通しは明るく、この分野の革新的な企業には多くのチャンスがあります。IDTechExには、食品およびAgTechに関するレポートを各種発行しています。 調査レポート_食品&Ag Techh で、詳しい内容をご確認ください。
 
IDTechExの調査レポートは、
・アイディーテックエックス株式会社 (IDTechEx日本法人) が販売。
・IDTechExからの直接販売により、お客様へ各種メリットを提供。
・ご希望の方に、サンプルページ 送付。
・オンラインでの試読については、ご相談ください。
・その他、調査レポートに関する、質問、購入に関する問い合わせは、
 下記担当まで。見積書、請求書も発行します。
 
IDTechExの調査レポートを購入すると、30分のアナリストタイムが提供されます。直接アナリストにレポートに関する質問が可能です。
 
IDTechExは、調査、コンサルタント、イベントを通して、戦略的なビジネス上の意思決定をサポートし、先進技術からの収益を支援しています。IDTechExの調査およびコンサルティングの詳細については、IDTechExの日本法人、アイディーテックエックス株式会社まで、お問い合わせください。
 
問合せ先
アイディーテックエックス株式会社
東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービル21階
担当:村越美和子  m.murakoshi@idtechex.com
電話 : 03-3216-7209
 
 
Top image source: Plenty Unlimited Inc