直接リチウム抽出法によるリチウム市場の再構築

直接リチウム抽出法によるリチウム市場の再構築
リチウムイオン電池の成長に伴い、リチウムの需要は急増しています。それと同時に、リチウム抽出法に対して効率性、持続可能性、地域や環境を問わない汎用性を求める声も高まっています。本記事では、直接リチウム抽出(DLE)技術の登場により、生産者がいかにして今後10年間で世界的なリチウム需要の拡大に対応しつつ、ニーズを満たすことが可能になるのかを解説します。
 

 
今後10年にわたり世界的にリチウム需要拡大が予測される中、迅速かつ持続可能で、経済性の高いリチウム生産を求める声が一段と高まっています。直接リチウム抽出法(DLE)は、こうした要件をどの程度満たせるのか、またリチウム市場全体を変革する可能性がある点で、大きな注目が集まっています。IDTechExの最新調査レポート「直接リチウム抽出法(DLE) 2026-2036年:技術、有力企業、予測」では、DLEの登場により、効率性、持続可能性、市場での汎用性を原動力として、2036年までにリチウム市場は520億ドル規模に達すると予測しています。
 
 
DLE市場の成長は、技術面、市場動向、サプライチェーン要因によって推進されている。出典:IDTechEx
 
変動の激しい世界市場でのリチウム需要増加
 
電気自動車(EV)バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS) への投資拡大に伴い、リチウムイオン電池業界 は成長を続けており、需要対応のためにリチウム生産拡大が強く求められています。従来のリチウム抽出手法である塩湖かん水蒸発法や硬岩採掘法は、成熟技術として広く商用化されている一方で、それぞれが固有の課題や制約を抱えており、スケールアップは容易ではありません。
 
リチウム含有鉱石は自然界に広く分布している訳ではなく、世界でもごく一部の地域に集中しています。採掘やリチウムのバッテリーグレード化は、環境負荷の大きい採掘手法や広範な下流工程に依存しており、その多くは中国が掌握しています。一方、かん水蒸発法ではリチウム抽出に12〜24か月を要する場合があり、急速に拡大する市場需要への対応には適していません。また、リチウム生産には特定のかん水条件が整わなければならないという点で、一般的に効率の低いプロセスでもあります。
 
さらに、世界のリチウム市場の価格は、過去5年間で大きく変動しており、市場の特性として変動性は今後も継続すると見込まれています。そのため、資源保有者は、硬岩採掘やかん水蒸発が抱える課題を克服できるだけでなく、低コストで長期的に収益性を維持できる抽出プロセスを求めています。IDTechExのレポート「直接リチウム抽出法(DLE) 2026-2036年:技術、有力企業、予測」では、DLE技術がこれらすべての要件を満たす新たな選択肢を提供すると結論付けています。
 
迅速・効率的・持続可能なリチウム生産の魅力
 
DLEは、吸着材、溶媒、膜などの特殊なプロセスや材料を用いて、かん水からリチウムを選択的に抽出する技術です。この技術によって、蒸発池を必要としない効率的な抽出が可能となり、リチウム生産のフットプリントを大幅に削減するとともに、さまざまな地域や気候条件下での生産が実現します。
 
DLEプロセスでは、リチウム回収率が80%を超える例も多く、かん水蒸発法における40〜60%の回収率を大きく上回ります。つまり、1トンのリチウムを生産するために自然環境から汲み上げるかん水量を削減できるだけでなく、リチウムを除去した後のかん水を生態系へ戻すこともできるということです。
 
これらの要素が相まって、DLEはかん水蒸発法や硬岩採掘と比べ、総じて持続可能性の高い生産手法であると位置付けられています。バッテリーサプライチェーン全体を通して持続可能性の重要性が高まる中、とりわけバッテリーパスポートの導入といった動きにより、DLEプロジェクトへの関心や投資は今後さらに拡大すると見られています。
 
また、DLEは高い選択性を持つことから、数時間から数日程度という短時間でのリチウム生産が可能となります。生産に数年を要するかん水蒸発法と比べ、DLEは需要に応じて生産量を柔軟に増減できるため、リチウム生産者の市場対応力が向上します。長期的には、こうした柔軟な対応がリチウム価格変動の影響をある程度緩和する可能性もあります。
 
アメリカ・ヨーロッパのリチウム供給機会の創出
 
かん水蒸発法が経済的に成立するためには、リチウム濃度が十分に高く、マグネシウム、カリウム、ホウ素、溶存固形物などの不純物が少ないかん水を利用する必要があります。この条件により、かん水由来のリチウム生産は、適切な気候とかん水組成を有するアルゼンチン、チリ、中国といった限られた国だけで行われてきました。
 
ところが、DLE技術の高い選択性により、より多様な種類のかん水からリチウムを抽出できる可能性が生まれます。DLEプロセスは、炭化水素のような重い不純物を含む場合でも耐性が高く、リチウム濃度が50mg/L程度と低いかん水であっても経済性を維持できます。つまり、従来はリチウム抽出が困難であった地熱かん水や油田かん水も利用できる可能性があるということです。
 
IDTechExの新しいレポートでは、こうした特性により、地熱かん水が豊富なヨーロッパと油田かん水が豊富な北米の2つの地域が大きな恩恵を受けると予測しています。両地域ともバッテリーサプライチェーンの現地化と安定確保に取り組んでおり、DLEを通じた国内リチウム生産の大規模化は、その重要な一段階になると考えられます。
 
リチウム市場の展望
 
DLEの導入拡大は、技術成熟度の低さや、新たなリチウム選択性材料のコストや研究開発といった課題を克服できるかどうかにかかっています。しかし一方で、DLE技術の開発は加速しており、リチウムプロジェクト開発者からの継続的な支持も得られています。今後10年間でさまざまな新規DLEプロジェクトが動き始めると見込まれており、将来のリチウム市場における影響の大きさが示唆されています。
 
IDTechExのレポート「直接リチウム抽出法(DLE) 2026-2036年:技術、有力企業、予測」は、上記トレンドを包括的にまとめ、世界のリチウム市場が2036年までに520億ドル規模に成長し、DLEが主要なリチウム抽出法として台頭すると予測しています。本レポートは主要な需要トレンドを分析し、DLE技術における性能のベンチマーク評価とともに、DLEの有力企業、プロジェクト、ビジネスモデル、プロセスについて詳しく解説しています。また、世界のリチウム市場とDLEに特化した生産量と市場規模の10年間の詳細予測(技術別、塩水の種類別、地域別)を提供し、市場成長の主要な推進要因を詳細に解説しています。
 
さらに詳しくは、「直接リチウム抽出法(DLE) 2026-2036年:技術、有力企業、予測」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。IDTechExの最新調査レポートは、こちら でご覧いただけます。

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