Cu-Cuハイブリッドボンディングの進展:半導体パッケージングの未来
2023年9月15日
Dr Yu-Han Chang
先端半導体パッケージング向けのバンピング技術は、コンタクトピッチの狭小化や従来のフリップチップはんだ接合の限界に伴う課題に対応するため、大きく進化を遂げてきました。この分野における顕著な進歩の1つが、変革的なソリューションをもたらす3D Cu-Cuハイブリッドボンディング技術です。IDTechExは、2.5Dおよび3D先端半導体パッケージングの進歩を注意深くモニターしています。 調査レポート『先端半導体パッケージング 2023-2033年』と『先端半導体パッケージングの材料とプロセス 2024-2034年』では、急速に進化する3D半導体パッケージングの状況についての詳細な分析を提供しています。
バンプスケーリングの課題
はんだバンプの狭ピッチ化により、いくつかの問題が生じます。バンプの高さと接合面積を削減すると、信頼性の高い電気的接続を確立することがより困難になり、エラーを回避するために精度の高い製造プロセスが必要となります。わずかな凹凸でもボンディングの成功に影響が出る可能性があるため、コプラナリティ(平坦度)と表面粗さが最も重要になります。
製造においては、銅ピンやバンプの直径が小さいとエッチングが難しく、アンダーカットが発生しやすくなるなどの問題が伴います。電気化学的成膜(ECD)によるめっき工程も、均一性の確保やコプラナリティの制御がより難しく複雑になります。また、ボンディングの品質はバンプのコプラナリティ、表面粗さ、硬度などの要素に依存するため、バンプサイズの縮小が進むにつれ、温度、時間、圧力などのパラメータの調整も複雑になります。
従来のフリップチップボンディング方式では、ピッチが50μmまたは40μmに限られているため、熱膨張の不一致によって反りやダイのずれが発生し、信頼性に問題が生じます。これらの課題に対処するべく、半導体業界は10μmほどの狭ピッチも可能にする高度なファインピッチボンディング向けの熱圧着(TCB)への移行が進んでいます。TCBは、進化し続ける半導体パッケージングに要求される精度と信頼性を実現するうえで有望な手段であり、電子機器の小型化と性能の限界を押し広げます。
しかし、コンタクトピッチが10ミクロン程度まで狭小化するにつれ、いくつかの問題が生じます。はんだボールが小さくなると、金属間化合物(IMC)が形成されるリスクが高まり、導電性と機械的特性が低下します。さらには、リフロー中にはんだボールが接触してブリッジが発生し、チップの不良につながる可能性もあります。このような制約は、高性能部品のパッケージングにおいて、ますます厄介なものとなります。
Cu-Cuハイブリッドボンディングの出現
これら問題の克服に向け、ゲームチェンジャーとして登場したのがCu-Cuハイブリッドボンディング技術です。誘電材料間に金属端子を埋め込み、熱処理により銅原子を固体拡散させることで、はんだ付けに伴うブリッジ問題を解消するという革新的な技術です。
リップチップはんだ接合と比較した場合、ハイブリッドボンディングには明らかな強みがあります。まず、超微細ピッチと接続サイズを縮小することができるので、I/O数の増加が容易になります。性能要求を満たすために、デバイスが必要とする接続数が増加することは最新の半導体パッケージングにおいて極めて重要となります。2つ目に、アンダーフィル材料に依存することの多いフリップチップはんだ接合とは異なり、Cu-Cuハイブリッドボンディングではアンダーフィルが不要なため、寄生容量、寄生抵抗、寄生インダクタンスだけでなく熱抵抗も低下します。最後に、Cu-Cuハイブリッドボンディングでは、ボンディング接続部が薄くなり、フリップチップ技術で生じる厚さ10~30ミクロンのはんだボールがほとんど形成されなくなります。よって、半導体パッケージの小型化や効率化を実現する新たな可能性が開かれます。
Cu-Cuハイブリッドボンディング製造の課題:
Cu-Cuハイブリッドボンディングは、先進的な半導体パッケージングに大きな期待を持たせる一方、将来の発展のために革新的な解決策を必要とする一連の課題も提示しています。
現在、Cu-Cuハイブリッドボンディングには3つの方法があります(下記ベンチマーク表参照)。ウェハ・トゥ・ウェハ(W2W)プロセスが最も一般的に使用されてはいるものの、ダイ・トゥ・ウェハ(D2W)プロセスやチップ・トゥ・ウェハ(C2W)プロセスは、異なる大きさのダイを組み込む必要のある多くの用途に対応できるため、集中的に研究開発が行われています。
Three ways of Cu-Cu hybrid bonding. Source: IDTechEx - "Materials and Processing for Advanced Semiconductor Packaging 2024-2034"
3つの方法のどれにおいても、製造における極めて重要な側面の1つはボンディング環境であり、化学機械研磨(CMP)の最適化によって平坦でクリーンな誘電体表面を実現することが不可欠となります。また、ボンディングプロセス中にウェハに歪みや反りが生じる可能性を最小限に抑えるためには、焼鈍温度の低下と焼鈍時間の短縮に耐えうる誘電材料の開発も極めて重要です。銅溶液の電気化学的成膜(ECD)を最適化すると、焼鈍時間の短縮と焼鈍温度の低下も可能となり、効率も向上します。
D2W/C2Wプロセスの場合、ダイシングとエッジ効果に関連する課題に対応するだけでなく、ダイとウェハの汚染を最小限に抑えることが極めて重要となります。公差を0.2µmにまで抑えつつダイを正確に配置するには精度の高いピックアンドプレースマシンが必要です。配置時に生じる誤差に対応するには、銅パッドを大きくすることが不可欠となります。加えて、Cu-Cuハイブリッドボンディングの導入を確実に成功させるには、先進の薄型ウェハハンドリング技術が、重要な役割を果たします。
Cu-Cuハイブリッドボンディングの今後の開発は、こういったプロセスの重要な側面の改良と最適化に焦点を当てたものになりそうです。その中には、CMP、誘電材料、ECDソリューション、ピックアンドプレースマシンの進歩だけでなく、薄型ウェハのハンドリングにおけるイノベーションも含まれます。これらの課題を克服できれば、先端半導体パッケージングにおけるCu-Cuハイブリッドボンディングの普及への道が開かれ、より小型で高性能なエネルギー効率の高い電子機器の開発が可能になります。
3D半導体パッケージング(Cu-Cuハイブリッドボンディング)の詳細については、IDTechEx調査レポート『先端半導体パッケージングの材料とプロセス 2024-2034年』をご参照ください。このレポートは4つのパートに分かれており、先端半導体パッケージングを理解するための構造的アプローチを提供しています。第1部では、先端半導体パッケージングの技術、開発動向、主要アプリケーション、エコシステムを包括的に紹介しています。第2部では2.5Dのパッケージングプロセスに焦点を当て、RDLやマイクロビア用の誘電材料、RDLの製造技術、EMCとMUFの材料選定といった重要な側面を掘り下げています。このパートの各サブセクションでは、プロセスフロー、技術のベンチマーク、プレーヤーの評価、今後のトレンドを詳細に分析しており、包括的な洞察を提供しています。2.5Dパッケージングに関する考察を経て、3D半導体パッケージングのための革新的なCu-Cuハイブリッドボンディング技術(Cu-Cu hybrid bonding)に焦点を当てた第3部へと続きます。このセクションでは、製造プロセスに関する貴重な洞察を提供し、最適な結果を得るための材料選択に関するガイダンスを提供します。また、有機および無機誘電体を用いたCu-Cuハイブリッド接合の成功事例も紹介しています。さらに、本レポートは最終章で有機誘電体アドバンスト半導体パッケージモジュールの10年間の市場予測を掲載しています。今後10年間の予想される市場成長と動向について有意義な展望を提供します。
3D半導体パッケージングへの理解をさらに深めるために、IDTechExの調査レポート『先端半導体パッケージングの材料とプロセス 2024-2034年』を、ご活用下さい。
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