先端半導体パッケージにおける次世代RDL材料

先端半導体パッケージにおける次世代RDL材料

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電子機器の高性能化と高効率化の要求がますます高まる中、半導体業界は常にパッケージング技術の限界に挑戦しています。パッケージ上で配線接続されるダイにおいては、システムのパフォーマンスはパッケージ内で発生する信号通信に大きく依存します。帯域幅と電力効率という2つの重要な数値指標が、先端半導体パッケージングソリューションの成功を左右する極めて重要な役割を果たします。本記事では、ダイ間の通信改善に不可欠な要素の1つである帯域幅の高周波化を実現する材料要件に焦点を当てます。
 
帯域幅は、先端半導体パッケージングにおいて極めて重要な性能測定基準の1つであり、パッケージ上のダイ間で伝送・通信できるデータの量を指します。帯域幅が高周波化するほど、通信の速度と効率が向上し、デバイスが驚異的な速度でデータを処理できるようになります。帯域幅を測定する際には、主にIO/mm(mm当たりのI/Oの数)とデータレート/IO(I/O1個当たりのデータレート)という2つの要素を考慮します。IO/mmはダイエッジで利用可能なI/O接続の密度を表します。一方、データレート/IOは各入出力端子のデータ転送速度を指し、bps単位で測定します。IO/mmにデータレート/IOを乗ずることでダイエッジ1ミリメートル当たりの帯域幅(ダイ間で伝送できるデータの総量)を算出します。簡潔に言うと、帯域幅密度とは、ダイ間で送受信される、1mm(2Dパッケージング)または1mm2(3Dパッケージング)当たりのビット数のことです。
 
IO/mmとデータレート/IOの性能は、パッケージ内の再配線層(RDL)に大きく左右されます。ラインアンドスペース(L/S)、ビア、パッドの寸法といったRDLの基本的な特徴は、パッケージ内において最適な性能とデータ伝送を実現するうえで重要な役割を担っています。データレート/IOに直接影響するのは再配線層(RDL)で使用する材料の誘電率です。現在のところ、SiO2のような無機誘電体を使用することで、RDLにおけるL/Sの微細化が可能ですが、SiO2は誘電率が比較的高い(Dk=3.9)ため、高速通信には適しません。また、このプロセスは難易度が高く、高価にもなります。そのため、研究者たちは低誘電率、安価な代替誘電材料、中でも有機材料を積極的に模索しています。有機誘電材料を選定する際には、パッケージングプロセスへの適合性を確保するため、いくつかの重要なパラメータを考慮しなければなりません。IDTechExの調査レポート『先端半導体パッケージングの材料とプロセス 2024-2034年』は、先端半導体パッケージングに使用される有機誘電体にとって重要な5つの主要パラメータを特定しています。
 
有機誘電体RDLに重要な5つのパラメータ。 Source: IDTechEx - 『先端半導体パッケージングの材料とプロセス 2024-2034年』
 
Dk(誘電率)とDf(誘電正接):
 
材料の誘電率(Dk)は、その材料がシグナル・インテグリティ(信号の品質)を損なうことなく、より高いデータレートをサポートできるかどうかを表したものです。低誘電率材料は、配線容量を低減し、ダイ間の配線を短縮できるため、先端半導体パッケージングに適しています。低損失特性により、高周波通信機器の伝送損失も最小限に抑えられ、帯域幅がさらに拡大します。
 
破断伸び率:
 
各層の銅の被覆率が高い多層RDL(再配線層)の場合は、破断伸び率が高いほど有利です。破断伸び率が高ければ、機械的故障を起こすことなく、その材料はパッケージングプロセスや機器の動作に伴う応力やひずみへの耐性が高いということになります。
 
CTE(熱膨張係数):
 
パッケージの信頼性を確保するには、その誘電材料のCTEが銅金属層と同等である必要がありますが、ポリマーの誘電率を高めるフィラー粒子を使用できないために困難となっています。ポリマー誘電体に一般的に使用されているSiO2フィラーは、大量に充填する必要があるためDk値の低減には不向きです。また、フィラーの存在は、先端パッケージング技術に不可欠であるマイクロビアの微細化の妨げとなります。
 
ヤング率:
 
直径5µm未満の信頼性の高いマイクロビアを設計する場合、ヤング率の低いポリマー材料を利用することが重要です。銅にかかる応力を最小限に抑えられるため、パッケージ全体の信頼性の向上につながります。
 
吸湿性:
 
ポリマー材料の吸湿性は、システムの長期的な信頼性に不可欠です。吸湿性が高いと、層間剥離が生じて機械的性能と電気的性能双方に悪影響を及ぼします。
 
結論として、技術が進歩するにつれて、先端半導体パッケージングにおけるさらなる帯域幅の高周波化と電力効率の向上に対する需要は続くでしょう。有機誘電体は、低誘電率(Dk)特性、不良耐性の向上、費用有効性を実現する可能性を秘めているため、大きな関心を集めています。適切な材料の選択には、常にトレードオフが伴うということを認識することが重要です。たとえば、低誘電率ポリマーには利点がある一方で、熱膨張係数(CTE)が高くなり、機器の信頼性やパッケージングアーキテクチャに悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、先端半導体パッケージングソリューション開発の成功には、これら5つの主要な特性とその要件を慎重に検討し、遵守することが必要不可欠となります。
 
IDTechExの調査レポート『先端半導体パッケージングの材料とプロセス 2024-2034年』は、先端半導体パッケージングを理解するための構造化されたアプローチを提供しています。本レポートは4つの主要部分に分かれ、第1部では先端半導体パッケージングの技術、開発動向、主要アプリケーション、エコシステムを包括的に紹介し、第2部では、誘電体材料、RDL製造技術、EMCとMUFのための材料選択など、2.5Dパッケージングプロセスに焦点を当て、第3部では、3Dダイスタッキングのための革新的なCu-Cuハイブリッドボンディング技術を掘り下げ、製造プロセスと材料選択に関する分析を提供しています。また、有機誘電体先端半導体パッケージモジュールの10年間の市場予測も掲載しており、今後10年間の市場成長とトレンドに関する貴重な展望を提供しています。
 
先端半導体パッケージングの材料とプロセスをさらに理解するために、調査レポート『先端半導体パッケージングの材料とプロセス 2024-2034年』をご活用ください。
 
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